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阿部一二三vs丸山城志郎、異例の一騎打ちは“24分間の死闘”に 両者の努力と進化に「心から感動した」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byItaru Chiba
posted2020/12/14 11:15
阿部一二三(右)と丸山城志郎の死闘は24分間も続き、最後は大内刈りで阿部に軍配が上がった
始まってからやや押し気味に進めたのは阿部だった
「はじめ」の主審の言葉とともに、予想以上の組み手争いが展開される。
始まってからやや押し気味に進めたのは阿部だった。互いに慎重さを漂わせ、ぎりぎりの攻防が繰り広げられる中、積極性を失わず、技を繰り出していく。
残り1分27秒、丸山に1つ目の指導。
延長戦に入る。1分52秒、丸山に2つ目の指導。もう1つ受ければ、阿部の勝利となる。丸山は追い込まれた。
そのすぐあと、阿部に1つ目の指導。
合計試合時間が10分を超える。徐々に丸山もペースを取り戻し、技をしかけていく。延長11分57秒、阿部に2つ目の指導。これで互角に戻った。
決着は延長に入り20分が過ぎたときだった
両者、相譲らない。いつまで試合は続くのか――勝負が決したのは延長に入り20分が過ぎたときだった。阿部が大内刈りを仕掛ける。丸山が返そうとするが返せない。
ビデオ判定。結果、阿部の技あり。
畳を降りた阿部は、すべてから解放されたように、涙した。
ひととき間を置いたあとの会見で阿部は言った。
「(試合が)長くなることも頭に入れていましたし、想定外ではなかったです。冷静に自分の柔道ができたことが一番大きかったと思います。(勝負が決まった場面は)相手がひるんで返しに来たところで決められました」
これまでも何度も丸山と戦ってきた。延長戦にもつれる試合を何度も繰り返してきた。
研究の成果は見て取れた。序盤、丸山に引き手を持たせないようにし、いつもより前傾姿勢をとる。丸山が得意とする内股や巴投げを警戒してのことであったろう。本来の、身体を密着させてからの豪快な担ぎ技を狙う姿勢とは異なっていた。また丸山の釣り手を徹底的に抑え込む意図も見て取れた。