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阿部一二三vs丸山城志郎、異例の一騎打ちは“24分間の死闘”に 両者の努力と進化に「心から感動した」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byItaru Chiba

posted2020/12/14 11:15

阿部一二三vs丸山城志郎、異例の一騎打ちは“24分間の死闘”に 両者の努力と進化に「心から感動した」<Number Web> photograph by Itaru Chiba

阿部一二三(右)と丸山城志郎の死闘は24分間も続き、最後は大内刈りで阿部に軍配が上がった

「恩返しできずに申し訳ありません」

 勝負を決した大内刈りをはじめ、足技を積極的に出していたこともこの日への工夫だった。阿部は言う。

「本当にライバルという存在で、丸山選手がいたから僕自身ここまで成長できて、強くなれたのかなと思います」

 前傾姿勢を象徴とするように研究の末、従来のスタイルと趣を変えて臨み、勝利した。これまでにない工夫を加え、新たな引出しを得たのも、丸山という強大なライバルあってこそ。だから阿部は、感謝を捧げる。

 敗れた丸山も、阿部を称えた。

「阿部選手の存在があったから、ここまで追い込むことができました」

 それでも悔しさは涙となってあふれた。

「勝負の世界は結果がすべてです。恩返しできずに申し訳ありません、というしかないです」

阿部の負傷での中断による影響があった?

 丸山も、左からの背負い投げを交えるなど、この試合への工夫のあとが見られた。また、延長戦が続くにつれ、展開を押し戻していったように、持ち味のスタミナも発揮した。
 延長に入って6分過ぎ、巴投げをかけたあたりなど、ペースをつかんできたように思えた。ただ、そうしたときに2度、阿部の負傷で試合が中断され、つかみきるに至らなかった。どこか得意とする内股や巴投げへのこだわりから幅を広げきるには至らなかった面もあったかもしれない。

 それでも、阿部が代表に最も近いと言われていた2017、2018年の頃から、国内外の大会で快進撃を続け、2019年の世界選手権で世界一になったように、「海外の選手に強い」と評価を高め、阿部との代表争いにおいて、一度はリードするところまでたどり着いた足取りは消えることはない。

 そこにあった知られざる努力も失われることはない。

【次ページ】 阿部、丸山がどれだけ努力を重ねてきたか

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