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阿部一二三vs丸山城志郎、異例の一騎打ちは“24分間の死闘”に 両者の努力と進化に「心から感動した」
posted2020/12/14 11:15
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Itaru Chiba
死闘だった。
思い浮かんだ言葉はそれしかなかった。
12月13日、柔道男子66kg級の東京五輪代表決定戦、阿部一二三と丸山城志郎の一戦は、延長にもつれ、さらに異例と言える試合時間の果て、阿部が勝利。同階級の代表の座を手に入れた。
試合時間は本戦の4分に加え、延長戦に入り約20分、計約24分の末の決着だった。
過去、国際柔道連盟主催の大会では2017年世界カデ選手権女子57kg級の中矢遥香-クロプスカ戦の14分56秒が最長とされる。国内の主要大会では今年11月の講道館杯48キロ級の坂上綾-遠藤宏美の試合が22分7秒を費やし、最長ではないか。それらと比べても、特別な試合であったことが伝わる。
どちらが出ても金メダルを狙える
過去に例のない試みだった。
柔道の東京五輪代表は今年2月までに男女計14階級のうち13階級が内定。唯一、決まっていなかったのが66kg級だった。
阿部は2017、2018年世界選手権連覇をはじめ実績を重ねてきた。一方の丸山も2019年世界選手権で阿部を破って優勝するなど好成績を上げてきた。
どちらが出ても金メダルを狙える。有力選手がそろったからこそ、決めかねた。
本来は今春の全日本選抜体重別選手権が最終選考大会だった。だが開催できず、かわりに設定された12月上旬のグランドスラム東京も中止。
最終的に用意された場が、今回の一戦であった。今まで、候補選手同士の一騎打ちで決める形式はなかった。
無観客、しかし異様な緊張感が伝わってくる講道館の畳に2名が立つ。