オリンピックへの道BACK NUMBER
阿部一二三vs丸山城志郎、異例の一騎打ちは“24分間の死闘”に 両者の努力と進化に「心から感動した」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byItaru Chiba
posted2020/12/14 11:15
阿部一二三(右)と丸山城志郎の死闘は24分間も続き、最後は大内刈りで阿部に軍配が上がった
阿部、丸山がどれだけ努力を重ねてきたか
「僕の柔道人生は終わっていません。あきらめず、前を向いて強くなりたいと思います」
現在は27歳、集大成とも考えていた東京五輪代表を逃した直後でも、さらなる精進を誓う姿に、丸山の真骨頂を見た。「最強の敗者」、丸山はまだ前を見据える。
どちらが出ても金メダル、と言われる両雄が同じタイミングにそろい、熾烈に続いてきた勝負。一騎打ちという過去にない形式のもと、総試合時間24分を超える死闘の末に、東京五輪代表は決まった。
何度も、代表決定の場は、新型コロナウイルスの影響により変更された。自粛期間も長く、2人ともに思うように練習に取り組めない日々も短くはなかった。
困難な時期もある中、阿部、丸山がどれだけ努力を重ねてきたか。その姿がこの試合にうかがえた。
「本戦でこの闘いを見られればな、という気持ち」
試合後、全日本柔道連盟の金野潤強化委員長は言った。
「2人とも本当に素晴しい柔道をしてくれました。最高の戦いで心から感動しました」
日本男子代表の井上康生監督の言葉も、情感が込められていた。
「まずは阿部選手、丸山選手、ほんとうに素晴しい試合を見せてくれて心から感謝したいと思います。彼らはすべてをかけてこの場に立って、勝敗が決まってしまった部分はありますけど、素晴らしい試合内容で戦ってくれたと思います。
正直な気持ち、(オリンピックの)本戦でこの闘いを見られればな、という気持ちでいましたが、それがかなわないことは重々承知しています。阿部は丸山の思いも背負って戦ってくれると思いますし、丸山もこれを糧にさらなる成長を見せてくれるのではないかと思っています」
もはや、付け加える言葉はない。