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“NHLに最も近い男”が異例の契約?「日本のアイスホッケーを変える。誰かが行動しないと始まらない」
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byYokohama GRITS
posted2020/10/22 20:00
開幕戦で得点を挙げるなど新生チーム・横浜GRITSを牽引する平野裕志朗。11月下旬には再びアメリカへ渡る予定だ
高校卒業後に北欧、アメリカへ
北海道・苫小牧市出身の平野は高校時代からその将来を嘱望され、各年代の代表を経験してきた。いまや日本代表を牽引する存在となった25歳は、そんなNHLの舞台を目指して挑戦を続けている。高校卒業後、日本のチームを経て、北欧やアメリカを渡り歩き、昨年はNHLの2部にあたるAHL(アメリカンホッケーリーグ)のウィルクスバリ・スクラントン・ペンギンズと契約。その傘下にあたる3部のECHL(イーストコーストホッケーリーグ)に属するチームを中心にプレーし、目に見える結果を出しながら評価を高めてきた。
ただ、日本アイスホッケー界を背負って立つ平野と言えど、NHLの舞台はまだまだ先にある。NHLを頂点に、前述したAHLやECHLといった下部リーグが存在し、そこで多くの選手がトップを目指してしのぎを削っている。そこで数少ない日本人として挑んでいるわけだから、過酷な戦いであることは容易に想像できるだろう。
難易度の高いミッションに身を置く平野は、アメリカでの壮絶な戦いの日々を振り返る。
どんどん変わるルームメイト
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「1人ひとりの選手たちが、ここからのし上がってやろうと1つひとつのプレーに人生をかけているんです。だから、味方だろうと敵だろうと、突き落として自分が上がっていくとみんな考えている。本当に死に物狂いというか、常に戦争ですよね。
試合は年間72試合あるのですが、マイナーだと人の入れ替わりがすごい。週末の試合でうまくいかなかったら本当に首を切られるような世界。ルームメイトも10何人と、この2年間で変わりました。仲良くしていても、その日にはいなくなっているみたいな。だから、いい経験しているなというか、いい人生を歩めていると思っています」
いい人生を歩めている――その言葉が気になった。そこまで過酷な状況下でも突き進んでいける理由は何なのか。