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異常だったリーガ移籍市場 動けないマドリー勢&バルサ、久保所属ビジャレアルは戦力充実
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2020/10/15 06:00
ビジャレアルでここまでプレータイムが限られている久保建英。ヘラルド・モレノの負傷の報があり、この機会を生かせるか
アトレティコの重鎮が語った“恨み節”
「チームコスト制限」は2013年に始まった。それなのに、なぜ今年に限って大きな障害になったのかというと、それは新型コロナウイルスのせいである。
アトレティコ・マドリーの最高経営責任者ミゲル・アンヘル・ヒル・マリンは、8月半ばに次のように語っている。
「感染拡大によって収入が減ったため、1部と2部を合わせた42クラブのうち34クラブのチームコストが上限を超えてしまっている。不可抗力なのでリーガに罰金を科されることはないが、その状態では新たに選手を獲得してもリーガが登録してくれない」
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リーガの規定によると、当該クラブが補強を進める方法はただひとつ――まずは今いる選手を手放してコストを削減し、削減分の合計の25%以下のコストで賄える選手を連れてくるしかない。
例えば、年間コスト400万ユーロの選手Aと同600万ユーロの選手Bと同500万ユーロの選手Cの3人を移籍させて計1500万ユーロのコスト削減を行った場合、新戦力は375万ユーロ 以下の待遇で満足してくれる選手の中から選ぶということだ。
同額を2人に分配か、チームコストを落とすか
強化を要するポジションが2つあるならば、同額を2人に分配することになる。
あるいは、チームコストを限度額以下まで一気に落とすか。
いずれにせよ、クラブは不要な選手をできるだけたくさん売り払わねばならない。昨季の主力であってもコスト高であれば手放すことを考えねばならない。
とはいえ、買い手探しは難航した。
新型コロナウイルスは、持てるクラブも持たざるクラブも平等に襲ったのだから当たり前だ。
ならばとクラブは移籍金を諦めて、「自分の好きなところへ行きなさい。試合に出してもらえるところへ移りなさい」と持ちかけたが、選手は首を横に振るばかり。
スポーツ業界関係者のためのコミュニティサイト『2Playbook』を運営する、マルク・メルチェンは言う。
「この状況下で移籍の自由を欲しがる選手はいない。出場機会は得られなくても締結済みの契約どおり給料をもらう方がいいからだ」