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高校サッカー、8人で11人に勝った“奇跡のチーム”「ってか、フォーメーションどうすんの?」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2020/10/06 17:00
セットプレー時に8人がペナルティーエリア内に入る下田高校……って、これが出ている選手全員なのである
気になるフォーメーションの表記は……
目視とデジタル一眼レフを使って確認する限り、フォーメーションは「4-2-1」である。誤植でもなんでもない。
対する相手の小山高は4-4-2。ボールを持った瞬間――というか支配率という概念があれば、余裕の80%越えなんだが――ほぼ自動的に両サイドバックが高い位置を取ってくる。
それに対して下田の中盤は2枚、ボランチといえばいいのかインサイドハーフと言えばいいのか表現しがたい立ち位置なのだが、サイドに振られるたびに必死にボールサイドへとスライドするため、何度も15mくらいスプリントする。その姿を見るだけで泣けてくる。
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おまけに小山の最終ラインは1人か2人余らせて、下田の1トップの寺嶋洸キャプテンを見張っている。小山の立場を慮れば勝利への最善手を尽くすのは当然のことだが、下田にとってはなんという厳しすぎる状況……。
「サイドに振られることが多かった」
「相手が7、8人攻撃にかけてきつつ、サイドに振られることが多かったので、こちらは人が動かないといけなくて、セカンドボールへの反応が苦しくなりました」
寺嶋キャプテンのコメント通り、試合は開始直後から小山の攻勢が続いた。自陣左サイドをドリブル突破で崩されると、ゴール中央の混戦を押し込まれて先制点を許す。その直後に左サイドから上げられたアーリークロスが逆サイドへ。すると“大外”から完全フリーで走りこんだサイドの選手の折り返しを、ゴール前のFWに詰められる。序盤にして立て続けの2失点である。
日々のトレーニングではパス・トラップ・ドリブルなどの基礎技術、そして対人プレーをできる限り磨いたそうだが、寺嶋キャプテンいわく「トレーニングで最大できるのは3対3で、実際のサッカーを想定した練習はできず、どうしても局面でのプレーに限られてしまいます」とのこと。ピッチの横幅を広く使われてしまったら、日々のトレーニングの成果も何もあったものではない。
下田の選手たち、このまま崩れても致し方ないのでは――と思って見ていたら、救いの時が訪れる。飲水タイムだ。