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108人クラスター発生の立正大淞南高サッカー部の今 誹謗中傷とカズ・長友・本田からの激励を経て
posted2020/10/06 06:00
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph by
Toshihide Ishikura
「最初に『+33』と入っていて、知らない電話番号だったんですよね」
9月某日、島根県の立正大淞南高校サッカー部を率いる南健司監督のスマートフォンに、メッセージが届いた。開いてみると、動画ファイルが添付されている。
「立正大淞南高校の皆さん、こんにちは。長友佑都です」
『33』はフランスの国番号。長友の専属トレーナーを務める鬼木祐輔氏を通じてマルセイユから届いた動画には、体調への気遣いや誹謗中傷に対する心配、自身の海外でのプレー経験を踏まえた激励の言葉が収録されていた。
9月には横浜FCの三浦知良からも関係者を通じて激励のメッセージが届いた。カズは自身の公式ホームページに掲載した新聞の連載コラムでも同校の一件を取り上げ、『罵りよりも思いやりを』と訴えている。
いち早くブラジルから反応したのは、ボタフォゴの本田圭佑。8月12日に自身のツイッターアカウントで「立正大淞南高校、及びサッカー部の皆さん、コロナ感染について謝罪する必要なんてないよ」と呼びかけ、「今はしっかり食べて休んでな。また治ったら夢に向かって頑張れ。非難してる人だけでなく、心配してる人も沢山いることを忘れんといて」とエールを送った。
相次ぐ誹謗中傷、「窓を開けて大丈夫?」
全国大会でも実績を残している強豪で、セレッソ大阪DF松田陸、ヴァンフォーレ甲府FW金園英学、FW松田力など、多くのプロ選手も輩出している同校サッカー部の専用寮で発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)は、学校関係では国内最大規模となった。8月8日に2人の感染が判明したのをきっかけに、最終的に関連も含めて108人まで拡大。だが市中感染には至らず、所在地である松江市の松浦正敬市長は9月10日に収束宣言を出している。
同校にはクラスター発生直後から批判が殺到。SNSやインターネット上では無関係の生徒の写真が拡散されるなど、誹謗中傷が渦巻いた。換気のために寮の窓を開けているだけで「窓を開けているが、本当に大丈夫なのか」と電話が掛かってきた。