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アーセナルファンが19歳久保建英に伝えたい「エメリ監督とはサカのように付き合え!」
text by
山中拓磨Takuma Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/10/03 17:02
4節まで途中出場が続く久保建英。エメリに気に入られるのはどんな選手なのか
自チームのカラーを出すというよりも、対戦相手に応じた対策を徹底していくタイプで、戦う相手次第で異なるサッカーを見せることが多かった。そして、そのためのフォーメーションの柔軟な変更や、試合展開次第でハーフタイムの選手交代なども厭わない。
エメリのチームが、ヨーロッパリーグをはじめとした一発勝負のカップ戦で良い成績を収める傾向があるのは、これと無関係ではないはずだ。
しかし、試合途中の戦術変更が奏功して逆転勝ちを収めた試合もあった一方で、特にエメリ体制終盤のアーセナルは、柔軟というよりも一貫性を欠くという印象が先行し、ピッチ上の選手たちですら混乱しているような様子を見せることがあった。
エメリは時折自身のチームをカメレオンに例えたが、アーセナルを観ていると、まるで自分の色を見失ったカメレオンのようだ、と思わされたものだ。
もしこの時のアーセナルに、監督が頭の中に思い描いた戦術や要求を即座に理解し、それをチーム全体に伝えられるような選手が居れば、チームの主軸として重用されたに違いない。
そういった意味では、エメリから評価されるためには、戦術眼に加え、自分らしいプレイを見せるというより、「いかに監督が思い描いた役割を果たせるか」が重要となってくるだろう。
エメリは“どんな選手”を好む?
どのような選手をチームに集め起用するか、という点に着目すると、ウナイ・エメリはとても興味深い監督だ。“少し矛盾を抱えている”という言い方すらできるかもしれない。
結局は移籍は実現することはなかったものの、エメリはセビージャやバレンシアで何年も共にプレイし、腹心の部下と言ってもいいバネガをアーセナルに呼ぶことを熱望していたようだし、トレイラよりもエンゾンジ、ペペよりザハの獲得をフロントには進言したそうだ。
エンゾンジはバネガと同じく自身がセビージャ時代に率いてその特徴を良く知る選手で、ザハはもう何年もプレミアリーグの第一線で活躍している選手だ。
基本的な方針としては、自分が慣れ親しんだ選手、あるいは、そのリーグでの経験豊富な選手を好むタイプの監督であるのは間違いない。やはりこれも先ほどの、選手がいかに監督の与えた役割を理解し遂行できるか重視する、という点と通ずるものがある。
だが一方で、PSGではキンペンべやロ・チェルソといった無名の若手にチャンスを与え、アーセナルでは監督就任後初のプレミアリーグ開幕戦で、フランス2部から移籍してきたばかりでまだ19歳だったゲンドゥージをスタメンに抜擢、その後も主要メンバーとして起用し続けた。
現在アルテタのアーセナルで華々しい活躍を見せているブカヨ・サカも、実はエメリがユースチームから引き上げた選手で、トップチームデビューを果たした際にはまだ17歳だった。
経験や戦術理解を重視し、ピッチ上では保守的だが、自らが惚れ込んだ若手を起用するのはためらわない、なかなか大胆で漢気がある監督なのだ。
10代の若手選手にどんな言葉をかけていたか
エメリがアーセナル時代に若手について語る際に何度も口にしたのは「ハングリーさ」と「忍耐」という2つの言葉だ。