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「大関がケツから落ちるのは恥ずかしいぞ?」辛口の武蔵丸が見た“正代の大関昇進”と“翔猿の実力” 

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武蔵川光偉

武蔵川光偉Musashigawa Mitsuhide

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posted2020/09/29 20:00

「大関がケツから落ちるのは恥ずかしいぞ?」辛口の武蔵丸が見た“正代の大関昇進”と“翔猿の実力”<Number Web> photograph by KYODO

大相撲秋場所で優勝し、殊勲賞と敢闘賞を獲得した正代(左)と敢闘賞の翔猿

 よく、「今場所は勉強の場所ですね」なんて周りは言うけれど、僕はこの”勉強の場所”という言葉が好きじゃないんだ。本場所の土俵で勉強なんて、お客様に申し訳ないよ。特に朝乃山は大関だし、「いい見本を見せんかい!」と思うの。優勝経験もあって、それだけのものを持っているんだから自分の相撲を取り切るだけなんだよ。昨年5月場所で優勝した、一番良かった時の相撲が取れていなかったな。立ち合いから左前みつをパカーン! と取って右を差す得意の形になれてないんだ。外からガバッ! と上手を取るから体が開いてしまい、腰の位置も高くなる。当たったあとに腰が反っちゃっているんだよな。この形のままじゃ今後、勝てないよ?

 今場所は、隆の勝や若隆景など、若手の活躍も気持ちよかったね。隆の勝は、僕がまだ今の部屋を持つ前の、先代武蔵川(元横綱三重ノ海)部屋によく出稽古に来ていたんだ。当時は、三段目くらいだったかな? 関取だった舛ノ山ら5、6人と一緒にうちの部屋に来て、その頃からいいものを持っていたんだよ。押し相撲に徹していて、迷いがない。これを磨いていけば、大関昇進も時間の問題だと思っているんだ。今場所も朝乃山や御嶽海、照ノ富士に勝っている。すごく楽しみな存在なんだよな。

ヒーヒーと息が上がってからが本当の稽古になる

 今場所は両横綱をはじめ、のべ11人もの幕内休場者が出た場所でもあった。ケガが多い原因として「出稽古が禁止されての調整不足か」「先の7月場所との間隔が短く、リズムが狂ったのか」などとその原因を言われるけれど、僕に言わせれば、それは関係ない。「部屋に若い衆しかいなくて、関取衆相手に稽古ができずに稽古不足、調整不足」って、それは違う。部屋内で若い衆としか稽古できなくとも、そこで”自分の形”に持っていく稽古は充分にできるはず。出稽古に行っても行けなくても、番数さえガンガンいけばいいんだよ。朝乃山はじめ”スタミナ切れ”を感じたけど、若い衆相手に10番、20番やっていても、それはダメ。こんな時だからこそ50番取ればいいんだよ。若い衆も強くなれて一石二鳥だぞ?。それと、基本のぶつかり稽古を多めに、長めにやること。ヒーヒーと息が上がってからが本当の稽古になると言われてるけど、関取ともなれば、みんな地力はあるんだから、あとはヒーヒー言いながらスタミナを付けておけばいい。今、楽な稽古をしてると、そのうち体が耐えられなくなるよ。

 以前は場所後の巡業で関取同士でガンガン稽古をできていたけど、それも当分はできそうもない。でも、考え方を変えれば、そのぶん充分に体を休めてケアも出来るんだ。

 相撲協会は、コロナ感染防止対策が特に厳しく、力士たちも行動を制限されて精神的にも大変だろう。ストレスもあるだろうけれど、それは稽古で発散して乗り切るしかないな。 今場所も、優勝争いが盛り上がって面白い場所だったよ。みんな、お疲れ様でした! 

(構成・佐藤祥子)

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