スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
高度な投球術とブルペンの充実。
MLB、投高打低現象の新たな理由は?
posted2020/08/29 08:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
8月13日の対ブルワーズ戦、ダルビッシュ有が7回1安打、11奪三振の好投を見せた。
翌週の8月18日、今度は前田健太がやはりブルワーズを相手に、8回1安打、12奪三振の快投劇を演じた。
どちらも、ノーヒッターの可能性が十分だった。これはそろそろ出そうだな、と感じていたら、8月25日、ホワイトソックスのルーカス・ジオリートが、対パイレーツ戦で完全試合に近いノーヒッターをやってのけた。
101球という少ない投球数で、与四球1。奪三振13もめざましい数字だ。
2年前には、制球難に苦しみ、6点台の防御率(春先は7点台だった)に呻吟していた投手だが、モーションを変えてから化け、昨季はオールスターにも選ばれた。いまではホワイトソックスのエース格だ。
奇妙な数字がときおり眼を惹く。
いま挙げた3人だけではなく、今季は投手が光っている。年間60試合という特殊なシーズンのせいもあるのだが、データを見ていると、奇妙な数字がときおり眼を惹く。
たとえば8月25日現在、各球団の1試合当たりの平均安打数は8.04本にとどまっている。全球団の平均打率も2割4分2厘と低い。
第二次大戦後のシーズンで、これよりチーム平均打率が低かったのは、1968年の2割3分7厘(平均安打数=7.91本)だけだ。
いうまでもなく、あのシーズンは「投手の年」だった。マウンドが高くなり、ストライクゾーンが広がり、年間304回3分の2を投げたボブ・ギブソンが、防御率1.12、13完封という超絶的な記録を残した年だ。
もちろん、異論は耳に入る。
開幕後1カ月は投高打低の現象が珍しくない、という説だ。
4月の球場は大半が寒いし、打者よりも投手の方が早く仕上がるケースが多い。普段でも、5月の声を聞くころには打者の逆襲がはじまる。今季にしても、1試合当たりの本塁打数(1.31本)は、2019年(1.39本)に次いで戦後2番目の数字ではないか……。