濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
RIZIN、クラファンで興行再開!
窮地で爆発した、選手とファンの底力。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by(C)RIZIN FF SUSUMU NAGAO
posted2020/08/17 07:00
テクニカルかつ威力抜群の打撃で扇久保博正に完勝した朝倉海。念願のベルト奪取で2DAYS興行を締め括った。
興行再開……だが“元に戻った”のではない。
大会開催にあたっては新型コロナウィルス感染予防の取り組みも欠かせない。
入場時の検温、手指消毒はもちろんのこと、事前の来場者情報登録も必須。厚生労働省の接触確認アプリ、神奈川県の「新型コロナ対策パーソナルサポート」LINEへの登録も推奨された。
7月に開業したばかりのぴあアリーナMMは、最大1万2000人ほどの収容人数。今回は“密”を避けて1席ずつあけての着席、集客の上限は5000人となる。が、それでも両日ともに満員にはならなかった。お盆休みながら感染者急増の世の中、そもそも外出しようという気にならない人も多かったはずだ。実際、プロレスも含め多くの団体が集客に苦戦している。
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興行は確かに再開した。しかしそれは“元に戻った”ということではない。
「(コロナ禍は)これが現実。受け入れるしかない。大事なのは受け入れてどうアクションを起こすか。新しいRIZINの価値を創造していきたい」
初日のオープニングで、榊原はそう語っている。
続いて場内のスクリーンにクラウドファンディング支援者の名前が表示され、試合がスタート。マッチメイクもまた、当然ながら今まで通りとはいかなかった。なにしろ外国から選手を呼ぶことができないのだ。
外国人選手抜きでのマッチメイクの難しさ。
強さの競い合い、その水準を高める意味でもスケール感を出す意味でも、“メジャー格闘技イベント”には強豪外国人が欠かせない。
たとえば2000年代前半にコロナ禍が発生したとして、ピーター・アーツやアーネスト・ホーストのいないK-1、エメリヤーエンコ・ヒョードルやミルコ・クロコップが来日できない状態でのPRIDEは考えられない。
RIZINは当時に比べれば主力に日本人が多いが、それでもマッチメイクは難しいものになる。特に日本人トップ選手の相手が見つけにくい。今回は全試合が日本人選手、日本在住の外国人選手たちの対戦になった。UFCとの契約を終え、今年からRIZINに参戦している井上直樹は拠点にしていたニューヨークから帰国し、練習環境を変えて試合に臨んだ。
「ニューヨークでは練習ができなかったですし、不安はありました」と井上。それでもリアネイキッドチョーク(裸絞め)で一本勝ちを収め、ワールドクラスの実力を示している。