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ガンバは遠藤時代から宇佐美時代へ。
「今の貴史はチームが勝つために」
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/07 20:00
大阪ダービーこそ完敗を喫したガンバ大阪。しかしリーダーの自覚が芽生えた宇佐美貴史なら、ここから巻き返しを果たしてくれるはず。
キャンプ最終日に見せた泥臭い姿勢。
宇佐美の内面の変化を端的に物語る印象的なプレーがある。
今年の沖縄キャンプの最終日となる2月1日、練習試合で京都サンガ相手に4得点を叩き出した宇佐美だが、最前線で見せたのはアリバイ守備ではない猛烈なプレスと、時に豪快なスライディングも厭わない献身的な姿勢だった。
エースとしてゴールを量産し残留争いに貢献した宇佐美は、ここぞという場面ではプレスバックでも泥臭くプレー。その真意を今年2月、こう明かしてくれたことがある。
「後ろの選手は無駄なくできるだけ小さなモーションでボールを奪うことが大事だけど、前の選手は大げさなぐらいでいいと、ドイツで監督も言っていた。前の選手がスライディングで止めたり、激しくタックルしてボールを奪って相手の攻撃を遅らせたりするプレーには意味がある。大げさなぐらい、1つのアクションでチームにいい流れをもたらせる」
生粋のサッカー小僧で、時に関西人らしい毒舌でチームを盛り上げてきた「やんちゃ坊主」だった宇佐美だが、28歳にしてプロ12年目を迎えた今、明らかにチームリーダーとしての自覚を見せている。
「強いチームにはいい中堅がいる。プレーでチームを引っ張りたい」
40歳の遠藤も感じる宇佐美の変化。
17歳でトップデビューを飾った当時から宇佐美を知り、良き先輩として支えてきた遠藤保仁も昨季から宇佐美が見せてきた変化を感じ取るひとりである。
「若い頃は自分がいいプレーをすることを意識していたかもしれないけど、今の貴史はチームが勝つためのプレーをしている」
セレッソ大阪戦でJ1最多となる632試合出場を果たした遠藤は、長らくガンバ大阪の顔であり、そしてそのサッカー観がチームのスタイルに絶大な影響を与えてきた。
しかしながら、Jリーグが誇る鉄人も40歳。コロナ禍の影響で過去にない過密日程が待ち受ける今季、もはや全ての試合で背番号7に頼ることは不可能だ。
大記録の達成前、遠藤も自らの立ち位置を冷静に見つめていた。
「日程の計算みたいなのはしていないけど、全部の試合に出るのは多分、無理なので」