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本田圭佑が語る。カッコつける理由、
「嫌なこともやる」、『自助論』。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2020/06/21 09:05
取材が行われたCSKA時代の本田。2010年、CL決勝トーナメント1回戦のセビージャ戦で30mもの距離から決めた直接FKは鮮烈だった。
「作った人格が、本当の人格になるんです」
――簡単じゃなさそうだね。
「それが普通になればいいんですよ。僕なんていうのはカッコつけることが当たり前になっていますから。だって毎日、すぐそこにカメラがあると思って生活してますから。サッカー選手は、カッコよく振る舞うことを人格にしないと」
――そういう考え方の選手は初めて会ったよ。
「極端に言うと、僕の場合、無理をして先に人格を作っちゃうんですよね。ヒーローとしての人格を作って、普段からそう振る舞うようにする。それを続けていたら、自分の本物と重なるんですよ」
――人格が追いついて来るということ?
「そう! 作った人格が、本当の人格になるんです。そうしたらホンマにカッコイイ本田圭佑ができあがるんですよ。だから1日1日が本当に大切になってくるんです」
サミュエル・スマイルズの『自助論』を推す。
ミネラルウォーターの瓶がほぼ空いた頃、本田は質問をしてきた。
「最近読んだ本で印象に残ったものはあります?」
こちらが答えに迷っていると、本田がすぐに言葉を続けた。
「サミュエル・スマイルズっていう作家を知ってます? 彼が書いた『自助論』という作品。最近読んだ中では、一番良かったかな」
スマイルズは1800年代に活躍したイギリスの作家で、『自助論』は1859年に発行された。日本では明治時代に発売され、福沢諭吉の『学問のすゝめ』とともに大ベストセラーになった古典だ。
「題名どおり、自分を助けるっていうことを唱えている本。ようは自分を助けることができるのは自分だけだと。すっごくいいよ」