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本田圭佑が語る。カッコつける理由、
「嫌なこともやる」、『自助論』。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2020/06/21 09:05
取材が行われたCSKA時代の本田。2010年、CL決勝トーナメント1回戦のセビージャ戦で30mもの距離から決めた直接FKは鮮烈だった。
「安売りっていうのはホンマに気をつけていますよ」
本田が携帯電話を取り出して、メールを確認した。
「車、まだ時間かかりそうです。水でも飲みますか?」
本田はミネラルクォーターで口を湿らせると、なぜ自分がメディアにあまり出ないのか、理由を語り始めた。
「オレは子供の頃のイメージを大切にしている。自分が子供のときってどんな人がカッコよかったのかなって考えるわけですよ。そのカッコよかった人を実践したい。今の大人になった自分で」
――子供がどう思うかを大切にしていると。
「オレは別にCMにいっぱい出たいとか、スポンサーといっぱい契約したいとか、そういう人気者になりたいわけではない。ホンマの、真のスターでいたいから」
――心のヒーローってことか。
「だからなんでも表に出ればいいっていう問題ではなくて、安売りっていうのはホンマに気をつけていますよ。だから、テレビ番組にあまり出ないっていうのも、そこに関係している」
「サッカー選手っていうのは、カッコつけなきゃあかん」
――オファーはあるけど、一切断っていると。
「サッカーを知っている人と話すっていうのはいいんですけども、サッカーとは違う世界の人との出演のオファーが来ると、オレはどのレベルで会話をすればいいのかと思ってしまう。タレントさんに質問されて、オレはどうすればいいのか。そんな気を遣って仕事なんてしたくないから。出るなら、常にガチで話したいから」
――自分を平均のレベルに合わせるのが嫌なんだね。
「見ておもしろいって思う人がいるかもしれないけど、子供が本当に見たいのはそういうものではないと思う。子供っていうのは、ガチに憧れる。だって小さい頃は、将来は大金持ちになりたいとか、イタリアのACミランの選手がカッコいいとか思いませんでした?」
――子供の憧れはすごくシンプル。
「だからサッカー選手っていうのは、カッコつけなきゃあかんのですよ。カッコつけて当たり前。カッコつけることに慣れなあかん」