メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
停滞MLBの論点は安全ではなくカネ。
足並み揃うNBAと対照的な無策ぶり。
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAP/AFLO
posted2020/06/09 11:00
7月のリーグ再開に動き出したNBAとは対照的に不透明な情勢が続くMBL。レンジャーズの新球場では未だに試合は開催されず……。
サラリーキャップの有無。
このようにMLB、NBAの動きの速さが違う理由として、サラリーキャップの有無、システムの差異が大きく影響していることは間違いない。
NBAのサラリーキャップはリーグの収益をもとに算出されており、それぞれのチームの収入が減れば自動的に翌年以降の選手の総年俸も少なくなる。サラリーキャップの額が下がれば、チームが補強に利用できる金額も減ってしまう。
NBAと選手会との協約には、伝染病や戦争など不可抗力の事態が起きた際、中止された試合数に応じて選手の給与が削減されるという条項も含まれている。シーズンとプレーオフが行われなかった場合、5月15日から選手のサラリーが25%減額されることでリーグと選手会は4月中旬にすでに合意している。このように再開できなければリーグ、チーム、選手のすべてが損をするシステムが確立されているため、全体の意思統一も図りやすいのだ。
タブーを持ち出され、反発する選手会。
ADVERTISEMENT
一方、サラリーキャップを採用していないMLBはそれほどシンプルではない。リーグの収益と選手の年俸にもちろん相互関係はあるが、直結するわけではない。それと同時に、選手会がサラリーキャップの導入に長年にわたって激しく反発し、過去にはストライキも起こしてきたという歴史がある。
MLBはもともと開幕準備が中断した3月に選手の年俸の60日分を保証し、実施された試合数に比例した額を支払うことで選手会と合意していた。ところが今季が無観客シーズンになることが決定的になり、莫大な収入減を予期すると、「総収入をチームと選手が折半する興収分配プラン」の導入を希望。選手会側はこれをサラリーキャップと捉え、“タブー”を再び持ち出されたことに猛反発する。こうしてNBAのように一枚岩にはなりきれず、ビリオネア(=オーナー)とミリオネア(=選手たち)がそれぞれの利益を主張する泥沼交渉に陥っていったのだった。