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停滞MLBの論点は安全ではなくカネ。
足並み揃うNBAと対照的な無策ぶり。
posted2020/06/09 11:00
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
AP/AFLO
「私は今季が行われるとは思わない。そんな自分の考えが間違っていることを望みたいが……。シーズンがキャンセルされ、多くのファンを失うことになったら、特にいくつかの小規模マーケットチームにとっては厳しい状況になるだろう」
6月5日、『ESPN Baseball Tonight』のポッドキャストに出演した大ベテラン記者、ティム・カークジャンがそう述べたことで、改めて2020年のMLBシーズン開幕に悲観的になったファンは少なくなかったのではないか。
米スポーツのファンならご存知の通り、MLB開幕に向けたリーグと選手会の交渉が難航している。争点は新型コロナウイルスの中でプレーするための安全対策ではなく、カネ。無観客シーズンの収益減をカバーするため、選手の年俸削減を望むオーナー側と、そうはさせまいという選手側が真っ向から対立しているのだ。
NBAが見せたリーダーシップ。
MLBはスポーツエンターテイメント・ビジネスである。パンデミック下のシーズン強行でオーナーが赤字を増やしたくないことも、健康面に不安のある状況でプレーしなければいけない選手が大幅な減俸は避けたいことも、十分に理解できる。ただ時を同じくして、他のメジャースポーツが再開に向けてより精力的に動いていることで、MLBのイメージが余計に悪くなっている印象がある。
米スポーツではNFLに次ぐ人気を争うという意味でMLBと比較されることの多いNBAは、6月4~5日に大きな一歩を踏み出した。4日、NBAが提案した再開フォーマットがオーナー会議での投票で承認された。翌日には選手会もこれをサポート。フロリダ州オーランドに22チームが集まった上で、7月31日にシーズン再開という方向で動き出すことになりそうだ。
コロナショックと全米を震撼させている人種差別への抗議活動のおかげで、現在、アメリカは騒然としている。そんな中でも黙々と準備したNBAのリーダーシップは称賛されてしかるべきだ。この流れによって、5月上旬に開幕案が提示されながら、以降の話し合いが進まないMLBの無策ぶりが改めて際立った感がある。