ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
DeNA楠本泰史「まずは打たないと」。
背番号“7”が似合う選手になれるか。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKyodo News
posted2020/05/24 09:00
楠本は平成7年7月7日生まれで背番号「37」。プロ初本塁打は代打逆転満塁弾だった。
低迷の原因は「心」。
「もちろん技術不足という前提はあるのですが、心に余裕がなく、自分で自分を追い込んでしまったところがありました。オープン戦のときは自信に満ち溢れ、伸び伸びプレーしていたのが、シーズンに入ると、この1打席、このワンプレーがとか、明日も試合に出たい、結果を出さなければと変に自分に対しプレッシャーを与えてしまったような気がします。
例えば試合にコンスタントに出られている方々は、試合直前までリラックスして、試合に入ると集中するといった切り替えが上手いのですが、僕は試合前からいろいろなことを考えて、頭をフルに使った状態で試合に入っていました。しんどくなるぐらい気合を入れていたし、マインドセットができていませんでしたね」
それを痛切に感じたのがファームに落ちてからだという。楠本は二軍で70試合に出場し、打率.315、OPS.837と十分な数字を残している。
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「ファームでできていることが、一軍でできないのはなんでやねんって。ファームでは決して気を抜いているわけではないのですが、心の余裕というか力みなくリラックスして、時には試合中、少し笑顔が出るようなこともありました。これぐらい楽しんで野球をやらなければダメだなって理解したんです。もちろん結果は大事ですけど、結果を求めすぎて空回りするぐらいなら、今、自分の置かれている環境を楽しまなくちゃいけない。幼いときから夢だった場所で野球をやっているわけですからね」
伊藤の言葉で確信に変わる。
問題は心の在りようだった。昨年の12月、懇意にしている伊藤光とともにハワイに自主トレへ行った際、今のような話をするとキャリアに長けた先輩は、次のようなアドバイスをくれたという。
「気合は入れなくちゃいけないけど、入れすぎると空回りする。やらなければいけないのはわかるし、微妙な最後のコントロールは難しいけど、そこができないと長く戦えないよ」
自分で感じていたことに間違いはないと楠本は確信をした。