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DeNA楠本泰史「まずは打たないと」。
背番号“7”が似合う選手になれるか。 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph byKyodo News

posted2020/05/24 09:00

DeNA楠本泰史「まずは打たないと」。背番号“7”が似合う選手になれるか。<Number Web> photograph by Kyodo News

楠本は平成7年7月7日生まれで背番号「37」。プロ初本塁打は代打逆転満塁弾だった。

貢献したい気持ちが強すぎて。

 楠本と話していて感じるのは、自己分析力に長けたクレバーな選手だということだ。まだ大きな結果は手に入れていないものの、センスに裏打ちされたロジックと学習能力の高さが感じられる。ビジョンがあるのだ。

 出身校である東北福祉大学の大塚光二監督(元西武ライオンズ)は、楠本について次のように教えてくれたことがある。

「私は彼が2年生のとき(2015年)に監督に就任したのですが、すでにバッティングに関しては言うことはなかったですね。体の開きやタイミングについてちょっとアドバイスする程度で、芯に当てる技術は高く、調子を落とした際の修正ポイントも理解している選手でした」

 仙台六大学リーグでは、MVPや打点王、本塁打王、首位打者などタイトルを総ナメにした。大学日本代表に選出されると、4番を任されたこともあった。

「ただ非常に器用な選手で、私がもっと振っていいよと言ってもチームのことを考えて急に逆方向へ打ったり、強引に引っ張ってセカンドゴロ(進塁打)を打つことがありました。チームの勝利に貢献したいという気持ちから自分を殺してしまうところがあったようで、その責任感は素晴らしいのですが、もっと思い切って欲しいという気持ちはありましたね」

 このあたりの「野球を考えてやる」部分は決して悪いことでないが、それが現在のジレンマにつながっているのかもしれない。

大塚監督「申し訳ないことをした」

 ところで、楠本は右肩を痛め4年生の春に内野手から外野手へと転向しているのだが、大塚監督いわく2年生のころから肩と送球に不安があったという。

「ただ、本人にはプロに行きたいという強い希望がありました。私としてもあのバッティングセンスに加え、ショートを守れるとなるとドラフト上位も夢ではないと考えました。それもあってショートにこだわってしまい、外野手への転向が少し遅れてしまった。彼に申し訳ないことをしてしまったなって思っているんです。もう少し外野への転向が早かったら、あのような評価ではなかったかもしれません」

 楠本は2017年のドラフト会議で8位指名され、DeNAに入団した。三原一晃球団代表によればこの前年に9位指名した佐野恵太と同様、獲得をするのに迷った選手のひとりだったという。だが、楠本は下位指名ながら台頭し、誰もがそのポテンシャルを認めるに至った。昨年6月9日の西武戦では8回裏に代打で登場するとプロ初本塁打が逆転満塁アーチとなりヒーローになった。

 あらためて大塚監督は「勝負強さもありますし、使いつづけてもらえれば必ず結果を出してくれる選手だと思っています。がんばってほしいですね」と、教え子の成功を祈った。

【次ページ】 熾烈な外野争い「まず打たないと」

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