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“コロナ後”に向けて。若い力がつなぐ
スポーツクライミングの底力と可能性。 

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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posted2020/05/26 11:00

“コロナ後”に向けて。若い力がつなぐスポーツクライミングの底力と可能性。<Number Web> photograph by AFLO

「W杯という舞台で何かしらの答えを」

 選手に及ぼす影響も大きい。今年のボルダリングジャパンカップでは、男子の小西桂や佐野大輝、女子の松藤藍夢(あのん)、野部七海(ななみ)、青栁未愛(みあ)、工藤花が、上位進出を果たして、初めてW杯ボルダリング日本代表の座をもぎ取った。W杯の舞台を目指して昨年1年間の努力を実らせた選手たちだからこそ、安井ヘッドコーチは「なんとか国際大会を経験させたい」の想いが強い。

「彼らが国際基準の課題でどんなパフォーマンスをするかは楽しみなんです。率直に言って、彼らがW杯ボルダリングに出場して、すぐに結果を残して五輪強化選手になれるかといったら難しいと思います。でも、彼らはW杯で国際基準の課題に跳ね返されたら、必ずそれを糧にして、ひと回りもふた回りも強くなろうとするはずです。それは必ず、日本選手全体のレベルアップにつながっていきますから。ただ、そうした強化責任者の立場での考え以上に、彼らが去年1年間に努力したことに対して、W杯という舞台で何かしらの答えを手にさせたいんですよね。その思いが大きいです」

パリの実施種目次第で、日本もチャンスに。

 最後は2024年パリ五輪での実施種目についての影響も触れておきたい。

 スポーツクライミングのパリ五輪での実施は、昨年6月のIOC(国際オリンピック委員会)総会で承認されている。その内容は確定していないものの、男女それぞれ「ボルダリング+リードのコンバインド」と「スピード」の2種目を行い、スピードには男女計32名、コンバインドには男女計40名が出場というフォーマットが有力視されている。

 しかし、IFSC関係者によれば、IFSCは昨年6月以降もボルダリング、リード、スピードの3つの単種目実施という悲願に向けて、IOCに働きかけ、東京五輪でのスポーツクライミングの成功次第によっては逆転での実現に手応えを得ていたという。

 当初の予定通りなら、実施種目は今年12月のIOC理事会で正式に決まる。しかし、これは東京五輪の実施状況を見極めて判断されることになっていたため、東京五輪そのものの開催が延期になった状況にあっても予定通りに理事会が開かれるのか、それとも来年に持ち越しになるかは不明だ。

 スポーツクライミングだけでなくあらゆる競技が見通しの立たないなか、国内外で若いアスリートたちの前向きな強い意思が未来をつなぎとめている。

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