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中田英寿が叫んだ「よっしゃああ!」。
“あのユベントス戦”の本当の価値。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2020/05/06 09:00

中田英寿が叫んだ「よっしゃああ!」。“あのユベントス戦”の本当の価値。<Number Web> photograph by AFLO

ヨーロッパのサッカーシーンにおいて、紛れもなく中田英寿こそが初めてスターになった日本人だった。

ユーベ戦直前に変わったルール。

 当時のセリエAはEU外選手のベンチ入りは3人までとなっており、ローマではアルゼンチン代表のFWガブリエル・バティストゥータとDFワルテル・サムエル、ブラジル代表のDFカフーとMFマルコス・アスンソン、それに中田がいわゆる外国人ワクの対象となっていた。

 フィオレンティーナから引き抜いたバティストゥータは絶対的な得点源で、サムエルとカフーは最終ラインに欠かせない。24歳の日本人MFは、難しい立場にあった。

 ところが、ユベントス対ローマ戦を前にして、EU外選手の登録制限が突如して撤廃されたのである。“ジョーカー“として期待できる中田を、カペッロはユベントス戦に招集できるようになったのだった。

中田が決め、さらに同点弾を呼び込んだ。

 3-5-2のシステムでトップ下に入っていたトッティよりも、中田は左サイド寄りのポジションを取る。しかし、なかなかボールが入らない。チーム全体がタテに急いでしまう。ローマは決定的な場面を作れない。

 ゴールの予感も前触れもないなかで、79分にスタンドがどよめく。6万人を超える観衆の視線を集めたのは、ローマの背番号8である。中盤でボールを奪うとそのままドリブルで運び、DFが間合いを詰めるまえにミドルレンジから右足を振り抜く。オランダ代表GKエドウィン・ファンデルサールを無力化した一撃が、ゴール左上に突き刺さった。

 中田が、決めた。

 1点差に詰め寄っても、試合の構図は極端に変わらない。トップ下というより左サイドに位置する中田も、相手のボールをチェイスするシーンが多い。

 1-2のままロスタイムに入る。その直後だった。

 左サイドでヴァンサン・カンデラのパスを受けた中田が、ペナルティエリア左外からシュートする。低く鋭いライナーがファンデルサールを襲い、ヴィンチェンツォ・モンテッラがプッシュする。

 中田が、同点弾を呼び込んだ。

【次ページ】 このドローが、スクデットにつながった。

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