リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
19歳のメッシによる伝説の5人抜き。
カンプ・ノウに揺れた白いハンカチ。
posted2020/05/06 20:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
2007年4月18日は、たしか19時半頃に家を出た。
生涯忘れられないゴールを目の当たりにする予感などするわけもなく、カンプ・ノウへの道中はむしろバルセロナの苦戦を予想していた。
試合は国王杯準決勝の第1レグ。ヘタフェはリーガこそ9位だけど失点は20チーム中最少で、クラブ史上初の決勝戦進出を前に意気があがっている。
数カ月前から歯車が噛み合わなくなり、勝率を5割近くにまで落としているバルサは、あるいは負けてしまうかもしれない――。
メインスタンド最上部にあるプレス席まで上がってみると空席が目についた。水曜日の21時キックオフが一番の理由だが、直近2試合で1ゴールしか決められない様を見て、足を運ぶことをやめたソシオもいたはずだ。
エトー、グジョンセン、メッシ。
発表された観客数は5万3599人だった。
バルサのGKはホルケラ。ディフェンスラインは左からファンブロンクホルスト、プジョル、マルケス、ザンブロッタ。中盤はピボーテにイニエスタが選ばれ、その前にデコとシャビが並んだ。攻撃の要ロナウジーニョは3日前のリーガのマジョルカ戦に続いて故障欠場した。よって、左はエトーで真ん中にグジョンセン。右には背番号19をつけた19歳のメッシが立った。
レフェリーが笛を吹いた。
バルサはシャビとデコを軸にパスを繋ぎ、両サイドを突いていった。ヘタフェは臆することなく前に出て、バルサより先に明らかなゴールチャンスを作った。両者ともに攻めて勝利を目指すスペインらしい展開だ。しかし、乱戦となってはいまのバルサは不利だろう。
そんなふうに考えていたところで、バルサが先制した。