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中田英寿が叫んだ「よっしゃああ!」。
“あのユベントス戦”の本当の価値。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2020/05/06 09:00
ヨーロッパのサッカーシーンにおいて、紛れもなく中田英寿こそが初めてスターになった日本人だった。
このドローが、スクデットにつながった。
5分のロスタイムをしのいだローマは、2位ユベントスとの勝点差6をキープする。残り5試合を3勝2分けで乗り切り、1982-83シーズン以来のスクデットを獲得したのである。
1980年代後半から2000年代前半のフットボールシーンにおいて、セリエAでプレーすることは最高のステイタスだった。各国代表クラスの選手にとって絶対に辿り着きたい場所であり、リーグ内でステップアップをはかることが理想のキャリアデザインでもあった。
それだけに、世界最高峰とも世界最先端とも呼ばれていた当時のセリエAで、覇権争いに決定的な影響を及ぼした2001年5月6日の中田英寿は忘れがたい記憶である。
いまも魂を揺さぶる中田の叫び。
ヨーロッパでプレーする日本人選手が日本サッカー界の一部分となり、タイトルを獲得する選手も現れてきたからこそ、パイオニアとしての存在感がくっきりと輪郭を帯びてくる。
あのユベントス戦から19年もの月日が流れても、日本語で「よっしゃあああ!」と叫んだゴールシーンは観る者の魂を揺さぶる。そして、日本だけでなくイタリアで語り継がれているところに――ロマニスタだけでなくユベンティーノにとっても、記憶に刻まれた試合だろう――あの1得点1アシストの価値がある。