菊池雄星の「Stand Up」BACK NUMBER
菊池雄星がアメリカで学んだこと。
スタッフとの関係、楽しむ大切さ。
posted2020/04/23 11:00
text by
菊池雄星Yusei Kikuchi
photograph by
AFLO
アメリカに来て、文化の違いを様々な場面で感じます。
スタジアムの雰囲気もその1つで、メジャーではビールやポップコーンを売っている人たちまで生き生きしているように見えますし、警備のおじさんであっても僕たち選手との間に壁がないのを感じます。
「昨日のピッチングよかったね」「明日からの遠征頑張ってね」など分け隔てなく話をしてくれます。日本では警備の方々やショップの店員さんと話す経験はあまりなかったので、そこにも文化の違いを感じます。
もちろんリスペクトは存在しますが、かといって立場の上下があるわけではないと感じます。選手が偉くて裏方さんは偉くないというわけではないはずです。お互いの仕事をリスペクトし合える関係が理想です。
野球を始めた子供の頃の気持ちを。
1年間多くのメジャーリーガーを見てきて気づいたのは、一流になる人、結果を出す人の多くが同じスタンスで野球に向き合っていることです。
出身国が違っても、野球の考え方や取り組み方、あるいは楽しむ気持ちなど、メジャーで結果を出している選手たちには多くの共通点があると感じました。その中でも「楽しむ」というのは、我々日本人が苦手なところかもしれません。
昨シーズン中盤までマリナーズの4番を打っていたエンカルナシオン(現ホワイトソックス)という選手がいます。彼はドミニカが生んだスター選手の1人で、複数のチームを渡り歩いています。シーズン途中でマリナーズからヤンキースへ移籍していきましたが、常に大型契約を勝ち取る彼に、何を考えてプレーしているのかを聞く機会があったので「契約の大きさや4番という立場がプレッシャーになる事は無いのか?」と尋ねたら彼は笑いました。
そしてエンカルナシオンはこんな話をしてくれました。
「契約なんて気にした事は無い。俺は貧しいところで育ち、グローブもバットも買えなかった。そこから這い上がってきた。庭にあった木を使ってバッティングをしていた。
それが今は、折れた木が丈夫なバットに変わり、高いグローブに変わっただけだから毎日野球をする気持ちはあの時と同じだ。常に子供の時の気持ちを思い出してプレーするんだ。それ以外の事や結果は俺たちにはコントロールができないんだから」