スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
ビッグネームとコロナ禍の壁。
“人災”でMLBの偉大な記録が……。
posted2020/04/25 09:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
ALFO
ブーマー・リムーヴァー(boomer remover=団塊つぶし)という嫌な言葉が、一時期、アメリカで使われていた。
新型コロナウイルス蔓延の初期に、ベビーブーマー世代の死亡者が多く認められたためだ。いまはもちろん、犠牲者の世代が限定されていない。
この悪辣な疫病は、軽薄で偏狭な世代論などでは定義できなくなっている。
ただ、高齢者に逆風が吹いたことはまちがいない。
大リーグでも、それを裏付ける現象が起こりかけている。もし、2020年のシーズンが流れた場合、あるいは極端に短縮された場合、ある程度の高齢に達したビッグネームたちは、記録達成の面で大きな障害に阻まれてしまう可能性がある。
アルバート・プーホルズやミゲル・カブレラは?
反射的に浮かぶのは、アルバート・プーホルズやミゲル・カブレラの名前である。
両者とも、押しも押されもせぬ歴史的大選手だ。いまこの時点で引退しても、殿堂入りの確率は非常に高い。プーホルズなどは満票で入るだろう。
プーホルズは、すでに600本塁打と3000本安打を達成している。1980年1月生まれだから、今年40歳。2019年までの通算本塁打数が656本で、通算安打数は3202本だ。600号本塁打は、満員の本拠地で放った劇的な満塁弾だった。
エンジェルスとの契約は2021年まで残っているが、その先は現役をつづけるかどうかわからない。
ここ3年、彼は年間平均で126安打、22本塁打を記録している。'20年シーズンが成立していたら、'21年終了時には通算700本塁打(ボンズ、アーロン、ルースに次いで史上第4位)、3450安打(こちらはジーターに次ぐ史上第7位)も達成可能だったのではないか。
残念ながら、'20年シーズンの開催が危うくなった現在、この数字は割引せざるを得ない。