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2020年の高校No.1捕手では?
日大藤沢・牧原巧汰、打も肩も◎。 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/04/24 11:30

2020年の高校No.1捕手では?日大藤沢・牧原巧汰、打も肩も◎。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

日大藤沢高校の牧原巧汰は先の見えない夏に向けてどんな準備をしているのだろうか。

求めるのは「9通りのスイング軌道」。

「ストライクゾーンが9分割できるとすれば、9通りのスイング軌道がなきゃいけないじゃないですか。ティーバッティングでは、そこを理想にして、全力スイングで打ってるんです」

 引き腕(右腕)の強さを感じるスイングだから、インパクトの後の軌道が大きい。

「920から930グラムのバットを使って、片手でティーバッティング、毎日やってるんです。低めのボールを持ち上げるには、右手の引き動作がすごく大事ですから。どの方向へも飛距離が出せるようになったのも、片手スイングのせいだと思います」

 昨年の夏、神奈川県大会の準決勝で、当時同じ2年生だった桐光学園のコントロール抜群の左腕・安達壮汰の外寄りのスライダーを、がっしり踏み込んで、横浜スタジアムの左中間スタンドに放り込んだホームランなど、逆方向へのバットコントロールなら、大阪桐蔭・森友哉の高校時より技術が高い……と唸らさせたものだ。

左打者の内角球を二塁へ投げる難技術。

 バッティングの話ばかりが続いたが、むしろバッティング以上に感心したのが、「捕手・牧原巧汰」のスローイングのスピードとその精度だ。

 左投手が左打者に投じた内角球。シュート回転して、打者の体の近くを突いて、このコースを「逆シングル」のように捕球し、二塁盗塁を阻止するのは、捕手にとって非常に高難度のプレーなのだ。

 それを、2年春のこの捕手があっさりやってのけたから驚いた。

「あれは、監督に教わって、ずっと練習してきたことなんです」

 ニッと笑った。

 日大藤沢・山本秀明監督は、社会人野球の強豪・三菱自動車川崎(神奈川)で鳴らし日本選手権に優勝した、根っからの「捕手」である。

「投球がミットに入った瞬間、ミットを握らないで、ミットの面に当ててはね返して、ボールを右手に飛ばすんです」

 言葉にするとこうなるらしいのだが、一瞬の動きだから、説明が難しそうだ。

「スローモーションで説明すると、捕球したボールをミットから落としながら、そのボールを、右手を下から上に持ち上げるようにして捕りにいく。右手を回す感じですね。で、そのままトップに持っていって投げるんです」

 それに、フットワークが加わるという。

「左打者の内角は、そのままの位置で捕球すると、投げる動作が苦しくなるんで、捕球の瞬間に、右足をちょっと打者寄りにズラして捕るんです。ボールの持ち換えが速いと、動作全体に余裕ができるんで、精度も上がります。いいことばっかりなんで」

【次ページ】 キャッチャーをやるために日大藤沢へ。

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