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竹下佳江がVリーグ姫路に捧げた4年。
監督と子育ての両立、次の役割は?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2020/04/02 11:40
ヴィクトリーナ姫路での監督業と子育てを両立させていた竹下。「葛藤はあった」と4年間を振り返った。
子育てをしながら指揮をとる。
選手がまだ1人もいない状態から、土台を作り上げてきたという自負はある。
「最初は本当にゼロからのスタートで、周りには『引き受けて何の得があるの?』と言われたりもしたんです。それはそうかもしれないけど、でも土台がなければ、家だって崩れるわけじゃないですか。自分の勝手な達成感かもしれないですけど、土台がなければ何も始まらないわけだから、それが一番なんじゃないかなと思っています」
最初、監督のオファーを固辞し続けていた竹下が、最終的に引き受けたのは、子育てをしながらプロチームの指揮をとるという初のチャレンジをすることで、「女性アスリートや、バレーに限らず現場で働く女性に対して、何か発信できることがあるのでは」という思いがあったからだ。
ヴィクトリーナは、「アスリートマインダー」と呼ばれる保育士の資格を持ったスタッフを置いてサポートし、竹下は第2子が誕生した2018年に産休、育休を取得した。バレー界の現場ではまだレアなケースだ。
「ありえないって誰が決めたんだ?」
「このチームは、新しいことを取り入れるのが好きな人が、オーナーの眞鍋(政義)さんをはじめ、多いんですよね。外では普通だと思われていることが、ヴィクトリーナでは普通じゃない。『現場の人間が産休育休とるなんてありえないでしょ』と言われるところもあるかもしれませんけど、『ありえないって誰が決めたんだ?』と、そういうことを男性が言ってくれる。
私自身も、産休については、『監督が現場にいないのはよくないんじゃないか』という話を眞鍋さんたちにしていました。『今までのバレー界って、監督は選手の一番近くにいて、同じ時間を共有して、というのが普通だったじゃないですか』と。でも眞鍋さんは、『それって今までのバレー界だろ? 新しくしていけばいいじゃない』って、ものすごくポジティブなんですよね。それはすごく大きかったですし、本当にありがたかったです。
『普通ってなんなんだろう?』とか、『こういう形もあるんだよ』というものを、チームとして少し作ってこられたのかなと。今後もそういうことを必要とするスタッフや、子供を産んだ選手が入ってくるかもしれない。そういう時に、チームとしてスムーズに受け入れられると思います」