橋本社長が忘れられない竹下の言葉。

　橋本明球団社長は、入替戦の前、竹下監督が「この4年間で初めて、私がコートに立ちたいと思う」と口にしたのが忘れられないと言う。

　竹下はこう振り返る。

「私は入替戦も結構経験しているし、オリンピックの最終予選も含めて、プレッシャーがかかる試合の経験値は今の選手よりもたぶん高いので、そういう、たいしたことないって思える人がコートに1人いるだけで、全然違うじゃないですか。そういう意味で、初めて、あーもうここに立ちたい、立ったほうが楽だな、と思った時もありました。

　でも、今回の入替戦を見たら、そんなことは必要なかったなって思うぐらい、貞包（里穂）をはじめ、選手たちが本当にたくましい姿を見せてくれたので、そこはすごく嬉しかったです」

　監督業の魅力は、そうした選手たちの成長を感じられることだった。

「うちのチームはあまり経験がない、未知数な子が多いので、その分成長がすごくて、日に日に変わっていく。一生懸命な姿を見ていると、もっと教えてあげたいなとか、もっとこの子にあった伝え方がないのかなとか、それは選手の時には考えなかったことでした。私、子供2人だったのに、いつの間にこんなにいっぱい子供増えたかなって思うぐらい、大変なことも多いですけど（苦笑）」

「戦力外」を自らの口で告げる。

　一方で、監督として一番つらかったのが、愛情を注いだ選手に、自分の口から戦力外を告げることだった。

「できればやりたくない役割です。1年、1年が勝負だよと常に言っていますが、一緒に頑張ってきた選手なので、できることならやりたいだけやらせてあげたい。でも、人間的に素晴らしい選手であっても、技術的に劣っていて、チームとして契約を結ばないとなると、そういう話をしなきゃいけない。それはつらい宣告でしたね」

　そんな場にも向き合ってきたからこそ、選手たちにはこう望む。

「プロチームなので結果がすべて。悔しいことに、契約を結んでもらえないシーズンがくるかもしれない。その時に、後悔がない自分であってほしい。すごく能力のある選手がたくさんいるんですが、その能力を生かすも殺すも、本人がどう取り組んで、どういう考えでやっていくか次第。先を見据えて、自分で判断して、いろんなことができる選手になってほしいし、さらには、代表に入るような選手になってほしいですね」

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