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遠藤航は監督の狙いを遂行する。
昇格に必須の「静かなリーダー」。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/03/25 07:00
チームプレーヤーとして遠藤航は日本屈指の能力を持つ。それはシュツットガルトにとって1部復帰への重要なパーツとなっている。
CB、ボランチとして様々な気配り。
相手だって簡単にスペースを明け渡すつもりはない。2部では戦力的にトップレベルと言えるシュツットガルトが相手の場合、より守備に重心を置いてくる。少しのパス交換やシンプルなサイドチェンジだけでは崩せない。出しどころがないからどうしようではなく、出しどころがないなら、その前段階が大事になってくる。
この日、前半はセンターバックで、後半途中からボランチでプレーした遠藤はボールの受け方で様々な気配りをしていた。パスがもらえないとポジションを下げがちだが、そうではなく、味方が持ち上がってきたときにどのように受けるのかを意識していたという。
「うまくアングルを取って、斜めのボールを入れてチャンスメイクできている。ボランチのところで受けて“同サイド、同サイド”になるんじゃなく、身体を開いて逆サイドの選手につけるとか。その辺はボランチをやっていく上で大事なことだし、特にアンカーをやる上では意識している部分です」
前述の3点目のシーンは、遠藤のそうしたプレーから生まれたゴールだった。彼の持つゲームコントロール能力は試合を重ねるごとにチームに欠かせないものになってきている。
首位相手との我慢比べの中で。
新型コロナウイルスの影響でドイツ各地のサッカーが動きを止める前の3月9日。首位ビーレフェルトをホームに迎えたシュツットガルトは、5万4302人の大観衆をバックに、試合を優位に運んでいた。勝てば首位との勝ち点差が3に縮まる大事な一戦だ。
それまでわずか2敗。2部リーグのなかでは断トツの安定感を誇るビーレフェルトとの試合は「お互いしっかりプレッシャーをかけるところと、ブロックをしいて守るところははっきりしていたと思います。相手も切り替えは速かったので、中盤のセカンドボールの拾い合いでどちらが上回るか」(遠藤)という、さながら我慢比べの展開となった。
そんななか、遠藤はアンカーとして試合をコントロールすべく攻守のポジショニングで入念な微調整をしていた。そして前半途中からインサイドハーフでスタメン出場していたマンガラが1列ポジションを下げて遠藤とダブルボランチのような形が多くなってくると、少しずつ流れを作れるようになった。
「最初、僕がアンカー気味にプレーしてたんですけど、途中から2ボランチ気味にしたので相手のトップ下の選手がちょっと困ったような感じがあった。ボールの引き出し方は、2ボランチにしてからの方が良くなったかな、と。
自分がいい形でボールを受けた後に(味方選手が)相手の背後を狙う動き出しをしてくれれば、出せる自信はありました。ああいうプレッシャーのあるなかでもチャンスメイクしていく。それが中盤には求められると思うので。その辺りはは悪くなかったと思いますけど」