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遠藤航は監督の狙いを遂行する。
昇格に必須の「静かなリーダー」。 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/03/25 07:00

遠藤航は監督の狙いを遂行する。昇格に必須の「静かなリーダー」。<Number Web> photograph by Getty Images

チームプレーヤーとして遠藤航は日本屈指の能力を持つ。それはシュツットガルトにとって1部復帰への重要なパーツとなっている。

マリオ・ゴメスが得点を量産中。

 第21節のアウエ戦でのこと。試合後のミックスゾーンでスポーツディレクターのスベン・ミスリンタートが報道陣に囲まれている。「チャンスをしっかりと作り出し、ゴールを決めることができた。守備が安定し、相手にチャンスをほとんど与えなかった。どちらも大切なことだ。攻守の切り替えが改善されている」と満足気に勝因を語っていた。

 しかし、中断前のシュツットガルトはシュートまで持ち込めず苦しむことが多かった。パスの出しどころを探しながらボールが横にだけ動き、相手に詰め寄られると最後尾のGKまで大きく戻す。いつまでも動きに変化が生まれないことにファンのイライラがどんどん膨れ上がり、前半途中でブーイングが起きることも日常的だった。

 ところが、中断明けはチームの得点数が増え、なによりもFWのゴールが増えている。ベテランのFWマリオ・ゴメスは5試合出場4得点。前半戦は13試合で2得点だったので、その差は歴然である。

記者が称えたボール奪取と縦パス。

 地元記者は「なぜ急に復活したのか?」と問いかけるが、ミスリンタートにすれば視点が違う。

「彼がシュートチャンスを迎えることができるようになって、決めるだけのクオリティを持っているということだ。我々の前線にはゴールを決められる選手がいる。ということはチームとして、どのようにそこまでボールを運び、チャンスを作るのかが重要になるんだ。シュートチャンスを作ることができれば、ゴールの可能性は増えてくる」

 ミスリンタートはそう強調した。

 前に点を取れる選手がいても、そこにボールが入らなければどうしようもない。ゲームコントロール、チャンスメイク。どこでどのようにリスクチャレンジするのか。その点で遠藤が果たしている役割は大きい。

 地元記者が「(アウエ戦の)2点目、3点目のコンビネーションが素晴らしかった」と話を振ると、ミスリンタートは3点目がなぜ素晴らしかったのかを説明しだした。

「3点目は確かに素晴らしかった。(遠藤)ワタルがボールを奪い、そこから次のプレーで縦パスをFWにつけた。素晴らしいシーンだった。ああいったシーンを作り出すためには我慢強くプレーを続け、相手の守備陣がずれる瞬間を待たなければならない」

【次ページ】 CB、ボランチとして様々な気配り。

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