濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
上場企業の後押し、女性限定大会――。
プロレス・格闘技“女子”の可能性。
posted2020/02/29 11:40
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
新型コロナウィルスの影響は、当然のことながらプロレス界にも及んでいる。
各団体は、会場でのマスク着用と手のアルコール消毒を観客に推奨。グッズ販売に伴うファンサービス(撮影会など)での選手のマスク着用も実施されてきた。
2月26日、政府から2週間の「自粛要請」が出ると、新日本プロレスやDDTなどが該当期間の大会中止を発表した。
女子プロレス団体スターダムは「要請」前に2月下旬から3月中旬にかけての主催興行、イベントを中止するといち早く発表している。タイトルマッチのある3月8日の後楽園ホール大会のみ、無観客試合として開催。興行という“主たる業務”を中止するのだから相当に大きな決断だ。
スターダムは上場企業ブシロード傘下の団体。コロナウィルス対策は会社全体での取り組みだ。団体としてはチケット代金、物販収入が途切れることになるが、決断の早さも含めて姿勢を鮮明に打ち出すことができたとも言える。
ブシロード体制で磨かれていくスターダム。
こうした例だけでなく、スターダムというブランドはブシロード体制によってこれまで以上に磨かれた感がある。
“聖地”後楽園大会は連続で超満員。1月大会ではスターダムの後楽園大会における史上最多動員数を更新している。後楽園という“モノサシ”で見る限り、愛川ゆず季の時代よりも紫雷イオ、宝城カイリの時代よりもファンを増やしているのだ。
ブシロード体制のスターダムは専門誌での広告展開、BSでのレギュラー番組スタートなど“露出”を大きく増やしている。同じグループの新日本プロレス中継『ワールドプロレスリング』でCMが流れている効果も大きいだろう。
岩谷麻優、木村花といった選手たちが持つ“もともとの評判”に、新日本をブレイクに導いたブシロードがお墨付きを与えたという見方もできる。「面白いらしいけど女子プロは見たことなくて」、「マニアが見るもんでしょ」といった抵抗や偏見は、だいぶ薄まったはずだ。そして実際、見たらすこぶる面白いのである。