才色健美な挑戦者たちBACK NUMBER
ソチで涙の棄権欠場を経験した
伊藤みきがそれでも前向きな理由。
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byYuki Suenaga
posted2020/01/15 11:00
スポーツと叱られることは似ている。
私はいろいろなスポーツをしてきて、その中でたまたまスキーのモーグルがちょっとうまくできた。でも他のスポーツに関しては全然センスがないんですね。
先日はゴルフに行ったのですが、スキーヤーってゴルフがうまい人が多いので、自分もそれなりに出来るだろうって思っていたんですけど、結局170ぐらい叩きました(笑)。途中から打ちすぎてスコアは数えられないし、どう打っていいのかも分からなくなるし、さらにプレーが遅れるから、周りの人にも謝ってばかりで。
私、何やってるんだろう……って思ったときに、これはすごくいい競技だ、って感じたんです。
スポーツと叱られることは、似ていると思っているんです。私は、競技からいつもバッシングされているみたいな気持ちでした。だけど手っ取り早く自分がダメだと気づかせてくれて、打ちのめされて、絶対にうまくなろう! って思える。そして努力をすれば、そこから小さな成功体験を積んでいけるなんて素敵じゃないですか。だから、スポーツも叱られることも、人が成長していく上で、重要だと感じているんです。実際、ゴルフではみんなに「センスない」って言われましたが、「大丈夫、センスなんてこれから作っていくものだから、気にしないで」って思っています(笑)。
バンクーバーオリンピックの時もそうでした。予選でこんな滑りじゃ全然ダメだって自己嫌悪になりましたが、そこから決勝の舞台でどうやって気持ちを切り替えたかというと、これがソチへの始まりの1本にしようって滑ったんです。そこからはとにかく一番になるために、できることを必死に、目の前にあることは全てやって、ダメになったらそのときに考えればいいと競技に取り組みました。
偽りのない姿が結果に出る。
モーグルって技に目を奪われがちですが、その直後に着地があって、コブがあって、ずっと動きが連続しているんですね。だから、大技が決まったとしても余韻に浸る暇はない。それよりも自分の持っている力を全部出して、ぶつけてきたというギリギリの滑りが格好いいんです。
私がオリンピックにこだわっていたのは、まさにそういう選手が集まる場所だから。もちろん運も縁もありますけど、大会に向けてどう本気で戦ってきたか、それぞれの選手の偽りのない姿が現れて、それが結果として明確に出る。だから痛い目にもあっているんですけど、オリンピックが大好きなんです。