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青学は「人間と戦術」で優勝した。
3月の立川から1月の箱根への激変。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2020/01/07 20:00
青学は1区に吉田圭太を配置した。序盤に離されなければ総合力では優勝を争える、という自信の現れでもある。
総合優勝を争う相手は東海大のみ。
「一般的には5強と言われてましたよね。でも、戦力を分析していくと、総合優勝を狙えるのは、ウチと東海大だけだったんです。青山としては、とにかく1区から攻める。それを徹底しました。
私はレースのシナリオを想像するのが好きです。ひょっとして、東京国際大は1区に留学生を持ってきて逃げ切りを図るんじゃないか。そうなった場合、吉田圭太なら対抗できる。できれば、ライバルの東海大に20秒の差をつけたい。それがプランだったんです」
全国高校駅伝の1区で区間19位と失敗した経験を持つ吉田圭太にはかなりのプレッシャーだったようだが、東海大に対してわずか8秒差でタスキをつなぐと、1年生ながら2区に抜擢した岸本大紀が追いつき、そしてトップで3区につないで青学大が主導権を握った。
3区では鈴木塁人が東海大に対してリードを広げ、4区の吉田祐也が相澤の持つ区間記録を更新して、「やっぱり青学は強い」ことを証明した。
リードしても、とにかく突っ込む。
今回、青学大の選手たちの走りは感動的だった。
箱根駅伝のセオリーは、リードしたならば区間序盤はゆっくりと入り、リスクを最小限にとどめる。そして後半にペースを上げ、最終的にはライバル校を引き離す。
しかし、今年の青学大は違った。
とにかく、突っ込む。
3区の主将、鈴木は最初の5kmを13分48秒で入ったし、優勝が確定していた9区でも神林勇太が14分02秒で突っ込んだ。
クレイジーなペースだ。しかし、青学大は逃げるのではなく、見えない誰かを追いかけるように飛ばした。
守るのではなく、最後まで攻めた。
原監督はいう。
「4連覇の時は、当たり前のことを、当たり前にやってきて勝ってました。でも、今回は違う。紆余曲折があって、ようやく勝った。いやあ、箱根駅伝で勝つのは本当にうれしいな」
自らに課した、勝ち続けなければならない旅。
どんよりとした立川ハーフから、10カ月。原監督の覚悟と、学生の攻めの姿勢。
やっぱり、箱根駅伝は面白い。