話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
J1残留の余韻に浸っている暇はない。
湘南には「新たな一歩」が必要だ。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2019/12/17 11:30
湘南は生き残った。しかし、2年連続で残留争いに巻き込まれ長年指揮をとった監督も去った。新たな一歩が必要な時である。
まだ曹監督の遺産で戦っている。
この試合は、湘南の今シーズンを象徴するような試合だった。
パワハラ騒動で曹貴裁監督が謹慎、辞任に至る騒動の中、湘南は試合では大量失点を重ね、勝てる試合も終盤に追いつかれたり、逆転されたりするなど勝ち点を失っていった。
徳島戦も先制され、追いつくところまでいったが、強い時の湘南であればそこから畳みかけて逆転するシーンが見られたはずだ。
1点取られても2点、3点取り返す喧嘩サッカーが湘南の持ち味だったが、今年はその勢いがなくなり、突き離す迫力がほとんど感じられなかった。
それでも今回、プレーオフでなんとか引き分けに持ち込めたのは、曹監督の遺産ともいうべき、前からアグレッシブにいく、球際で勝つ、人への当たりの強さなど、後半にそのベースとなるものを発揮することができたからだ。
そうした遺産と過去の残留争いの経験、そしてレギュレーションのアドバンテージ、さらに相手のシュートがポストに当たるなどの運を総動員してようやくドローに持ち込み、残留を決めた。
「ベースだけで戦ってきた」
今はJ1に生き残ることができた安堵の気持ちが強いだろうが、2020年シーズンに目を向ければ喜んでばかりもいられない。ベースはあるが、これからチームとして戦力も戦術も上積みしていかないと、来年も同じような戦いを強いられることになる。
齊藤はいう。
「曹さんがいなくなってからはベースだけで戦ってきたんで、来年はこのベースにプラス上積みをしないと上にはいけない。今年のように失点したり、あれだけチャンスがあるのに点が取れないのはもう通用しない。チャンスは作れているんで、そこを決め切る能力が必要かなと思います」
チームのスタイルが出来ているが個人戦術、個人能力の部分で湘南は改善の余地が大きくあるということだ。それには育成も大事だが、血の入れ替えも必要だろう。また、湘南で外国人選手が活躍したのはここ数年見たことがなく、質の高い外国人選手をいかに獲得するのかも大きな課題だ。
そうした選手補強も含め、「湘南スタイル」をどう進化させていくのか。J1に生き残れたから終わりではなく、これから湘南というクラブの価値を左右する「チーム改革」という戦いが待っている。