GO FOR TOKYO 2020BACK NUMBER
東京五輪で金を狙う美しい空手家。
清水希容を強くした「勝てる」感覚。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byChihiro Kano
posted2019/12/07 09:00
“無知の強さ”から円熟味へ。
気が付けば、空手を始めて17年になる。稽古と年齢、そして経験を重ねた彼女の演武は少しずつ円熟味が増しつつある。
「空手を始めて社会人になるまでは勢いでやっていましたね。“無知の強さ”で勝てていたのかもしれません。でも、形が持つ意味を知り理解することで、徐々にそれをコートの上でどう表現するかを考えるようになりました。今は持ち味であるダイナミックさや力強さ、スピードは誰よりもアピールできるよう、さらに追求しています」
現在、全日本選手権6連覇中で世界選手権も2度優勝している実力派だが、今は空手を続けられていることに強い縁を感じているという。というのも、大学卒業を機に一線を退くことを決意していたからだ。その決意を覆したのは、東京オリンピックで空手が初めて実施されるという朗報だった。
「空手を続けているおかげでたくさん気づいたこともありますし、いろいろな経験もさせてもらっている。誰もがオリンピックを目指せるわけではありません。だからこそ、武道の聖地・日本武道館で、会場に来たみなさんと1つになって演武を完成させて優勝したいですね」
最大のライバルはスペインの38歳。
11月29日から12月1日に開催された、東京五輪出場権を争う今年最後のポイント対象大会、KARATE1プレミアリーグ2019最終戦のマドリード大会で、清水は決勝でサンドラ・サンチェス(スペイン)と対戦。結果は準優勝に終わったが、この大会で東京五輪の代表入りを確定させた。
決勝で対戦した38歳のサンチェスとはプレミアリーグでは今季、清水が3勝、サンチェスが4勝を挙げている。何度も1点差未満の接戦を繰り広げてきたサンチェスは最大のライバルだ。
「アスリートとしてはもちろん、人としても尊敬できる選手ですし、互いに高め合うことができていると思います。彼女がいたからこそ、自分も今、こうして頑張れていますし、負けたくないからこそ、これまで以上に研究するようにもなりました。そういった意味でもサンドラ(サンチェス)の存在は非常に大きいですね」