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失格から一転、銅メダルを獲得した
競泳・大橋悠依のメンタリティ。

posted2019/11/13 11:00

 
失格から一転、銅メダルを獲得した競泳・大橋悠依のメンタリティ。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

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photograph by

Kiichi Matsumoto

 東京オリンピックの前哨戦とみられた、今夏の世界水泳。10代の選手が台頭する日本競泳界で、20代で才能を開花させ、遅咲きのエースと呼ばれる大橋悠依は、200m個人メドレーと400m個人メドレーに出場。だが、200m個人メドレー決勝で、泳法違反によりまさかの失格、涙を流した。しかし、6日後に行なわれた400m個人メドレーでは、173cmの長身を生かしたダイナミックな泳ぎで銅メダルを獲得。同大会・同種目で日本人が表彰台に登ったのは21年ぶり。来年へと弾みをつけた。

 涙の失格から見事に立ち直った彼女の強さはどこから来ているのか。

 10代の頃は自分よりも持ちタイムが速い選手と一緒になると、絶対に勝てないなって諦めてしまっていた部分があって。2番手、3番手を狙う安全牌みたいなレースをしていたんです。

 大学2年生、ちょうど20歳の頃です。試合に出ても最下位、自己ベストよりも10秒も遅いタイムを出してしまうこともあるほど調子が悪くて。自分としては毎日一生懸命、精一杯練習をやり切っていたのに、全然泳げない。半年ぐらいずっと原因が分からなかったのですが、検査したら貧血だということが分かったんです。それから治療をして、もう一度泳ぎ始めたときに、実は初めて泳ぐのが楽しいと思えた。それまでは泳ぐのが楽しいっていう感覚を味わったことがなかったんですよ。

 そのときに、やっぱり自分は水泳で速くなっていきたいと思ったんです。それがきっかけで、色々と考えるようになって、今まで諦めていた相手にだって、自分が100%の力を出せば勝てるかもしれないとチャレンジできるようになりました。そう思えるようになったことが、大学時代の競技生活で得た一番大きなことかもしれません。

平井先生の言葉で、やってやろう!

 平井(伯昌)先生の言葉も私の中では大きかったですね。貧血は回復してきたものの、その年、平井先生が指導する強化チームには入れなかったんですね。その強化チームが海外合宿に行く前、日本に残る私に平井先生が「速くなって俺を困らせてくれよ」って言ったんです。

 萩野公介選手や青木玲緒樹選手など、日本には平井先生の指導を受ける速い選手がたくさんいるじゃないですか。その数が増えると先生は忙しくなって大変になる。だから、お前も速くなって、俺をもっと困らせろって(笑)。あの言葉で、やってやろう!って気持ちになれました。

【次ページ】 世界水泳の失格直後、初心に戻って。

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