ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
“大成功のZOZO”の裏で痛感した差。
日本ツアー選手たちの葛藤と課題。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAP/AFLO
posted2019/11/05 18:00
タイガーに次ぐ2位で大会を終えた松山英樹。プレーでも、メンタル面でも、存在感を見せつけた。
初日は7位タイだった石川遼。
さて、少なくとも出場した日本ツアーのメンバーで、もっともPGAツアーを知るであろう石川遼は、5年在籍したかつての主戦場のゲームに2年ぶりに出場した。
「これが差だと、はっきりそう思います」
忸怩たる思いが胸で充満する。
細かい技術論で言えば、「アプローチ、パットのパフォーマンスはそこまで大きな差が出なかった気がします。パットだけなら日本の選手の方がうまいケースもある。でも、カップから離れたときのショットの精度に差がある」という見方だった。
それも原因のひとつとして、初日に7位と好発進しながら、日々順位を落としてしまったことに、期待に及ばない自らの“現在地”を思い知らされた。
「持っている底力が違う。自分は初日にかなり集中力を使った。でもうわべのゴルフじゃ4日間続かない」と厳しく自己評価する。
「1日だけならやりくりできるゴルフか、4日間やっても変わらないゴルフかの違い。試合を長くやればやるほど、自分とPGAツアーのトップ選手とは差が開いている。底力って、結局は技術の差なんです。彼らは技術があるから安定したパフォーマンスができる」
必要なタフさ、ツアー制度にも差。
ひとつ、日本ツアーの選手のエクスキューズを挙げると(本人たちは口にしないが)、彼らは過密日程のど真ん中でZOZOを迎えた。 チャン・キムは翌週中国でのWGC HSBCチャンピオンズを迎える前「8月から今週で11週連続の試合なんだ……」と疲労困憊の素振りを見せていた。連戦は12月まで続く。
出場人数が78人に制限されるアジアシリーズに参加するPGA選手は出場ゲームを自由に選べるエリートばかり。毎年秋に開幕する新シーズンの序盤だから、比較的フレッシュな状態で来日できる。
ただし、目下売り出し中の21歳、昨季新人王のイム・ソンジェなどは米韓日をまたにかけてZOZOが6連戦目、今年すでに35試合に出場という驚異のスケジュールをこなしている。世界最高峰の舞台でのし上がるためには、人一倍タフであることも必要なのだろう。
それにしても、石川が言う「4日間やってこそゴルフに差が出る」のが確かであれば、両ツアーは制度的にも選手の成長に差がつくことを助長しているようでもある。悪天候などの影響で日曜日までに72ホールが完了しない場合、PGAは週明けに持ち越すのが当たり前。一方日本では早い段階で短縮競技にする事例が多い。行く先の違いは明確だ。