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Jリーグきってのひょうきん者。
大分FW三平和司が見出す「楽しみ」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/10/22 11:30
雨の中、応援に駆けつけた大分サポーターに向けてダンスを届ける三平和司。
熾烈な前線のポジション争い。
今季、三平は怪我もなく、コンディションは安定している。しかし、ここまでリーグ戦のスタメン出場はわずか4試合。第8節から第20節ではベンチ外となり、途中出場しても1試合当たり、10分程度だった。
「去年もなんですが、トリニータは前線の3枚(1トップ2シャドー)の補強が活発で、選手が『大渋滞』している。なかなか定位置を掴むのが難しい。でも、なぜそのポジションの選手を獲得するのか。それは元々いる選手の何かが足りないから。そう考えれば、自分はまだまだ課題が多いし、信頼を掴み取りきれていないと感じます。
でも、だからこそ、自分がより成長できる楽しみがあるんです。練習での紅白戦の時、僕はBチームで出るので、相手はAチームじゃないですか。その時に『絶対にいいプレーしてやる!』と思えますし、むしろそのシチュエーションの方がいいプレーできるんですよ。なので、試合に絡めていない時期こそ、『今は我慢の時だし、今は自分のために、自分が成長するために練習をしよう』と思えたし、それが楽しみでした」
三平がプレーする前線の3枚には、小塚和季、藤本憲明、後藤優介、伊佐耕平、小手川宏基、オナイウ阿道、伊藤涼太郎、嶋田慎太郎、小林成豪と多くのライバルがいる。ボランチがメインの前田凌佑、ティティパン、ウイングバックがメインの田中達也(7月に加入)と含めると実に13人もの選手で争っているのだ。
8月に藤本がヴィッセル神戸に移籍をしたが、三平が言うように「大渋滞が起こっている」激戦のポジションだ。
「ベクトルを自分に向ける」
試合から遠ざかっているのは自分の実力。ただ、序列がめまぐるしく変わる今の状況は、裏を返せば一度外されてもまたすぐにチャンスが巡ってくる環境だということ。そのチャンスを掴むのは日々の練習の中にこそある。「試合に出られない」と怒りを外に向けるのではなく、自分がどう楽しんでサッカーができるかを考える。三平は「1つ先の楽しみ」を見出すことで、モチベーションを維持させ、それこそが苦しい時でも自分を見失わない秘訣であった。
「なるべく(感情の)ベクトルを自分に向けるように意識はしています。もともと僕は昔からエリートではなく、『雑草』として育ってきましたから」