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Jリーグきってのひょうきん者。
大分FW三平和司が見出す「楽しみ」。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2019/10/22 11:30

Jリーグきってのひょうきん者。大分FW三平和司が見出す「楽しみ」。<Number Web> photograph by Takahito Ando

雨の中、応援に駆けつけた大分サポーターに向けてダンスを届ける三平和司。

無名校出身「とにかくやり続ける」

 出身は神奈川県立秦野南が丘高校。高校3年間で全国大会の出場経験はなく、県予選では準決勝にも進めなかった。だが、神奈川大学に推薦入学すると、関東大学サッカーリーグで大ブレイク。卒業後に入団した湘南ベルマーレでキャリアをスタートさせると、大分トリニータ、京都サンガと渡り歩き、2015年に大分に復帰した。

 '16年にはチームとともにJ3でのプレーを強いられるが、1年でJ2復帰。そして昨年はリーグ30試合出場、J2では'12年以来となる2桁ゴール(10ゴール)を叩き出して、6シーズンぶり3度目となるJ1昇格に大きく貢献した。

「昨年も開幕戦でスタメン出場した以降は、ベンチ外を経験した。試合に出られてもプレー時間は少なかった。でも、本当に我慢強く、自分にマイナスにならないように楽しみを見出しながら、チームのためにやることが最終的に自分のためになることを信じてやり続けてきた。だからこそ、終盤でレギュラーを獲得することができた。

 今年は去年のことがあったので、シーズン初めに目標を『とにかくやり続けること』に決めたんです。やり続けてきたからこそ、今の立ち位置にいることができていると思っているので。結局は自分が頑張っていれば、絶対にいつか良いことがあるんです」

特訓のトラップが活きた決勝ゴール。

 浦和戦前、ベンチスタートを告げられた彼の「1つ先の楽しみ」は、「途中出場した自分が結果を残し、『見たか!』と見せつけている自分をイメージすること」だった。

 その言葉通り、三平は78分に2シャドーの一角として投入されると、劣勢だったチームの流れを変える。82分に左でボールを受けると、そのままカットインして持ちこみ、相手DFのタイミングをずらしてからミドルシュート。惜しくもゴール左に外れたが、このプレーがチームに攻撃のスイッチを入れることになる。

 後半アディショナルタイム3分。自陣でこぼれ球に反応したDF三竿雄斗が縦にボールを蹴りだす。これを至近距離で受ける形となった三平は、浮いたライナー性のボールを、ジャンプをしながら上体を倒して足元に収めた。そして間髪入れずに左サイドのスペースに飛び出した田中に、反転しながら正確なパスを送り込んだ。

 ボールを受けた田中は、ドリブルでDFを引き連れ、大外を回り込んで駆け上がってきた三竿へ渡すと、ファーサイドへ送ったクロスを待ち受けていた後藤がヘディングシュートを叩き込んだ。

 劇的な決勝弾の起点となった三平に話を聞くと、このプレーは今季からチームメイトとなった小塚からヒントを得たという。

「小塚はパスが上手いですし、トラップがめちゃくちゃ上手い。正直、パスの技術ってもともと持っているセンスの問題もあるじゃないですか。でも、トラップは俺でも磨けばできると思ったんです。全体練習後にスタッフを捕まえて、めちゃくちゃ強いボールを蹴ってもらったりして、トラップは相当頑張りました」

 その特訓で取り組んできた通りの鮮やかなトラップ、そしてそこからの反転パスで、チームの勝利を呼び寄せたのだった。

【次ページ】 今の「1つ先の楽しみ」は?

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