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エディー「君には弟がいるかね?」
会見に感じたティア2国への敬意。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2019/09/27 17:00
日本にいるとつい忘れそうになるが、エディー・ジョーンズはやはりラグビー界のスーパースターなのだ。
「ティア2は弟なんだ」と一喝。
また、他の記者からは「ティア2の国との対戦をどう思うか?」という質問が飛んだ。
やや、不遜な匂いがした。強豪国同士で争えばいいというニュアンスがあると感じたのは、私が日本人だからか。
ラグビー用語の基礎知識として、「ティア1」とは欧州のシックスネーションズに加え、南半球のニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンを加えた10カ国のことを指す。歴史も、実力も、経済力もある。今大会も、順当ならば、この中から優勝国が出るだろう。
これに対し日本、トンガ、アメリカといった国々が「ティア2」と呼ばれる。
ティア1とティア2の間には、大きな隔たりがあり、だからこそ4年前に日本が南アフリカに勝ったことは大いに称賛された。
この質問に対し、エディーさんは質問にかぶせるように記者に噛みついた。
「君には弟がいるかね? 弟だよ。いるかね? ティア2は弟なんだ。このW杯の構造は『兄に対して自分の力を証明しようと頑張っている弟』のようなものだ。今回、弟たちは若い選手たちを中心に非常によく準備して、より上を目指している。現在のラグビー界の構造は完璧なものとはいえないが、正しい方向に向かっている」
溜飲が下がった。やはり、見識がある。
残るはアルゼンチンとフランス。
これでわずか5日間のうちに、イングランドはティア2のトンガとアメリカを破り、満額の勝ち点10を獲得した。ここからが本当の勝負だ。
イングランドは10月5日には東京スタジアムでアルゼンチンと、12日には横浜国際競技場でフランスと戦う。
特に、フランスに敗れたアルゼンチンとの試合は大きな意味を持つことになるだろう。エディーさんはこう予見した。
「気象条件が大きな意味を持ちそうな試合だ。おそらくは湿度が高い環境になるだろうから、それに適したメンバーを選ぶつもりだ。アルゼンチンは、彼らの人生を懸け、ラグビーに情熱とプライドを持って我々に立ち向かってくるだろう。大切なことは、アルゼンチンの情熱に匹敵する情熱を持って試合に臨みつつ、それをコントロールすることだ」
そして最後にこう付け加えた。
「難敵だよ、アルゼンチンは」