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<エールの力2019 vol.2>
畠山健介「歴史的勝利に導いた声の力」

posted2019/09/27 11:00

 
<エールの力2019 vol.2>畠山健介「歴史的勝利に導いた声の力」<Number Web> photograph by Aki Nagao

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

PROFILE

photograph by

Aki Nagao

 密集でタフに身体を張るだけでなく、抜群の機動力を生かして攻守のあらゆる局面に絡む。

 日本ラグビー界屈指のフォワード、畠山健介は、ラグビーを「情報伝達のゲーム」だと捉えている。

「グラウンド全体に選手が分散するサッカーと違って、ラグビーはボールに選手が集中します。その密集の中で攻守がめまぐるしく入れ替わるため、自分たちがボールを持っているのか、いないのか、状況がつかめていない選手もいる。また、外の状況が見えない選手もいます。ですから、チームの現状を伝えることが必要。ボールが上手く運べているチームは、情報伝達が上手くできていると考えていいと思います」

 スムーズな情報伝達を実現するために、畠山が心がけていることがある。それは声を出し続けるということだ。

「運動能力は大したことがないぼくですが、信頼できる情報の発信者でありたいと思って、声を出し続けてきました。この声について、チームの先輩にも褒められたことがあります」

 だが、そんなこだわりが否定されたことがある。

「当時の日本代表のエディー・ジョーンズHCに『そのコールは機能していないからいらない』と。でもぼくは、声を出すことをやめませんでした。自分が声を出さなくなったら、情報伝達に支障を来たすと思ったからです。チームメイトのみんなも、ぼくの考えに賛同してくれて、エディーに掛け合ってくれました」

 エディー前HCも納得し、いままで通り、畠山の声がグラウンド中に響き続けることになった。

 声は、チームを正しい方向に導く羅針盤。声のないチームに、勝利は考えられない。

 声の大切さを知る畠山は、ファンの声援の力も熟知する。2011年、ラグビーの本場ニュージーランドでの大舞台で、彼はそのことを痛感した。

【次ページ】 スタンドにいたフランス人の声。

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