酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
中村剛也は特異な大スラッガー。
他の400本塁打達成者よりも凄い!?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2019/07/29 08:00
サヨナラアーチで通算400本塁打を決めた中村剛也。日本プロ野球史に残るアーチストなのは間違いない。
2000安打未満の400本塁打達成者。
中村は400本塁打倶楽部の中で、唯一安打数が1500本に達していない。そもそも2000安打以下の400本塁打達成者も山崎武司、T.ローズ、田淵幸一、中村の4人しかいない。
ちょっと意地悪な言い方をすれば、2000本も安打を打っていれば、本塁打も増えるバッターも多い。“400本塁打倶楽部”の中には、そういうタイプの選手もいる。そんな中で中村剛也は純粋に「本塁打を打つ」スペシャリストとして400本をクリアしたのだ。
中村のすごさを象徴しているのが2011年の本塁打王だ。
この年、NPBの加藤良三コミッショナー(当時)は反発係数が低い「統一球」を導入した。
そのとたんに「投高打低」が急速に進行し、大混乱となった。NPBの対応の不手際もあり、大きなニュースとなったが、中村はどこ吹く風で本塁打を量産。そして、キャリアハイタイの48本塁打で悠々とタイトルを獲得した。
この年、ロッテのチーム本塁打は46本。中村剛也はロッテの打者全員で打った本塁打数を1人ですいすいと抜いてしまったのだ。
リーグ総本塁打数の1割強が中村。
2011年の中村の凄さを表す割合が、以下のものだ。
<本塁打王の本塁打数が、リーグ本塁打総数に占める比率10傑>
※チーム数が6球団になったシーズン以降(セは1953年、パは1958年以降)
1.中村剛也(西)2011年 10.57%(48本/454本)
2.野村克也(南海)1962年 8.49%(44本/518本)
3.バレンティン(ヤ)2013年 8.40%(60本/714本)
4.王貞治(巨)1966年 8.03%(48本/598本)
5.町田行彦(国鉄)1955年 7.62%(31本/407本)
6.王貞治(巨)1964年 7.60%(55本/724本)
7.青田昇(大洋)1954年 7.56%(31本/410本)
8.王貞治(巨)1973年 7.51%(51本/679本)
9.王貞治(巨)1962年 7.48%(38本/508本)
10.王貞治(巨)1965年 7.34%(42本/572本)
2011年の中村はリーグ本塁打数の1割強を1人で打っていたのだ。NPB記録の60本を打った2013年のバレンティンでさえも8.4%であることを考えると、この数字はまさに破天荒だ。
この年、西武は3位に終わったこともあり、中村はMVPに選ばれなかったが、二度と出そうにない歴史的な記録だと思う。