“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
好調トリニータを繋ぐMF小塚和季。
イニエスタや中村憲剛のように。
posted2019/07/16 10:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
現在、J1昇格1年目にして5位につける大分トリニータ。好調の要因はJ3時代からコツコツと積み上げてきた片野坂知宏監督が掲げる“GKを含めたビルドアップで崩すサッカー”が浸透したことだ。
さらにいえば、その過程で加入した選手が大分のコンセプトのもとで才能を開花させている。中でも目に留まりやすいのが、現在得点ランキング4位タイの8ゴールを挙げている藤本憲明とオナイウ阿道という2人のアタッカー。
もちろんこの2人の能力、結果に全く異論はないが、今の大分のサッカーをじっくり見てみると、ある疑問が浮き出る。
なぜこの2人はここまで前線に攻め残ることができて、かつ常に相手のDFラインと駆け引きを続けることができるのか――。
この疑問の答えを探ると、1人の男の存在に目についた。大分の14番、MF小塚和季だ。
大分・小塚はボールの中継点。
今季、ヴァンフォーレ甲府から完全移籍で加入した小塚は、開幕スタメンを勝ち取ると、第18節まですべてにスタメン出場。3-4-2-1の2シャドーの一角が彼の主戦場となっている。
だが、シャドーというより、“3ボランチの左”のようなポジションを取る。1トップの藤本、2シャドーの右に位置するオナイウを前線に残しつつ、さらには両ウイングバックの攻撃力をより引き出すために、“3ボランチの左”のようなポジションを取り、ボールの中継点となっている。
「今の大分は後ろ(の組み立て)からスタートするので、FWとの距離が生まれると思いますが、僕がボールを受けないとどんどん相手の前からのプレスにはまってしまう。常にGKに見える中間ポジションを取ることで、相手が中を閉めればサイドが空くし、僕がボールを受けて前を向くことでビルドアップが始められる。
当然、奪われたら即失点というリスクと恐怖はありますが、僕が守備側の選手だったら、絶対に(パスを)出されたくない場所だと思うので、より自分が顔を出してボールをつけてもらうことで、味方をもう1つ高い位置に押し出すことができると思っています。
この役割は自分に課せられたものだと自覚もしていて、それがないとただ蹴るだけになってしまいますし、もう一度作り直すという作業がチームとしてできなくなる。ボールを失わない技術を自分の武器としている以上、そこの手助けは自分がやらないといけないと思っています」