“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
好調トリニータを繋ぐMF小塚和季。
イニエスタや中村憲剛のように。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/07/16 10:30
J1上位につける大分トリニータで開幕からすべてスタメン出場(18節時点)する小塚和季。「大分の14番」も定着してきた。
「パッと顔を上げた瞬間にノリくんと」
第17節のホーム・浦和レッズ戦。2シャドーの左でスタートした彼は、51分に中央でクサビのパスを受けると、DFに囲まれながらも素早くターンし、前線を見るために顔を上げる。CBの間から裏に抜けようとする藤本の動きを見逃さず、右足で浮き球のスルーパス。GKとDFの間へ落としたボールは、約20mの距離を一瞬で繋ぎ、完璧に抜け出した藤本の足にピタリ。そのままゴールに流し込んだ。
「パッと顔を上げた瞬間にノリくんとタイミングがあった。あのパスは、自分の中でもやっと気持ちのいいプレーを出せた瞬間でした」
続く第18節の横浜F・マリノス戦。この日、ダブルボランチの左に入った小塚は横浜FMのハイプレス、ハイラインのサッカーに対し、変わらずボールの中継点として機能した。
38分には大分MF松本怜の横パスが相手に引っかかるも、小塚はすぐに奪い返すと、間髪入れずにスペースに走り出していたMFティティパンへ浮き球のロングパスを送り込んだ。これは惜しくも、判断よく飛び出してきた横浜FMのGK朴一圭にクリアされたが、通っていれば完全な決定機だった。
ポジションを2シャドーの左に戻した後半は、パスだけでなくスプリントでも見せた。
52分に左サイドでボールを受けると、鮮やかな股抜きからドリブルでペナルティーエリアに侵入し、藤本へマイナスのクロス。72分にはカウンターから左サイドを駆け上り、逆サイドからのクロスをダイレクトで狙うなど、0-1で敗れたなかでも“らしさ”を見せた。
第19節のホーム、コンサドーレ札幌戦でも小塚のパスは冴え渡った。
1-1で迎えた39分には左サイドからのクサビのパスを受けると、すぐさま右足を一振り。浮き球のボールはそのままペナルティエリア内にいる島川俊郎の頭にピタリと届いていた。完全な決定機となったが、島川のヘッドは枠を逸れる。
スコアが動かぬままの75分。札幌が自陣でポゼッションするところを大分が猛プレス! 敵DFのキム・ミンテに横パスが入りトラップが大きくなった瞬間……小塚が鋭く寄せてボール奪取に成功。前へのフェイントをかけた直後、背後にいたオナイウにヒールパスを。これをワントラップしたオナイウが右足一閃。ゴール左隅に突き刺さるシュートで、小塚は決勝アシストとなり、結局2-1で大分は勝利を飾った。
大分で気がついた「生きる道」。
「昔と比べて、自分のプレースタイルがちょっと変わってきているかなと思いますね。ここ数年は決定的な仕事はするけど、ミスが多い選手だった。でも、ここではそのミスは許されない。
ボールを積極的に前に出すときと、ボールを失わないときのメリハリは大分にきてから、うまく見極められるようになったと思います。あくまでチームとしての約束事があって、それに基づいたプレーを選択する。シャドーなのでサボればいくらでも得意としている攻撃的な位置に残れるけど、今僕はそれをしたらいけない立場だし、サボらないことこそ自分の生きる道でもあると思っています」