酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
八村塁と大谷翔平の年俸から見る、
NBAとMLB、NPBドラフトの違い。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byGetty Images
posted2019/07/16 08:00
アメリカでの活躍に注目が集まる八村塁(左)と大谷翔平。彼らを通してドラフトを見てみるのも面白い。
ドラフトの進め方自体も違う。
NPBのドラフト指名が12球団合わせても毎年100人前後なのは、NPB球団の選手数が二軍、三軍を入れても1000人弱しかいないからだ。この人数だけ見ても、MLBとNPBはスケール感が大きく違うことが分かる。
MLBのドラフトはアメリカ、カナダ、そしてプエルトリコなどの選手が対象だ。つまり、ドミニカ共和国やベネズエラ、キューバなどの地域の選手は自由獲得となる。またドラフト対象地域の選手でも「アマチュアFA」という形で入団が可能だ。だから年間に入団する選手数はさらに多くなる。
またFA制度やQF(クオリファイングオファー)制度など、ドラフトが現役選手の移籍とも連動する。ドラフト1位指名権が他の球団に譲渡されるのはその1つである。
そしてNPBとMLBでは、ドラフトの進め方自体にも大きな違いがある。
NPBのドラフト会議は毎年、公開で行われる。荘重なアナウンサーの声で選手が呼び上げられるが、MLBでは「会議」は行われない。なにせ1200人もの選手を指名するのだ。各球団のGMやスカウトは球団オフィスのパソコンの前で、指名選手を入力していく。それでもドラフト指名選手が確定するまで3日間もかかる。
メジャーとは一線を画すNBAの組織。
ここまでは日米の野球で説明してきたが、NBAという団体は、組織そのものがMLBとは大きく異なっている。
チーム数はMLBと同様30チームだが、選手数は最大15人、そしてファームに相当するGリーグは28チームでNBAとは別の団体なのだ。こちらも選手数は10~15人程度で、アメリカのプロバスケットボール選手は840人ほどしかいない。
つまり、人数の規模で見るとNBAはMLBの10分の1程度の大きさなのだ。
だからNBAのドラフト指名は2巡目まで。合計60人だけだ。これから漏れた選手は自由獲得となる。NPBのドラフトと同様、公開の会議で指名される。なおNBAでもドラフト指名権の譲渡がある。
MLBではドラフトで取った選手は、ほぼ例外なく一旦マイナーでプレーさせて経験値を高めさせる。メジャーデビューは早くても1年後だが、NBAのドラフト1巡目は、多くの選手がNBAへの試合出場が約束される。競争によってGリーグに落ちる可能性はあるにしても、アマからいきなりスターダムにのし上がることも可能なのだ。