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平野佳寿がアシストした初勝利。
チームと自分を救った苦労人左腕。
posted2019/07/15 11:30
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Getty Images
まさかな、と思った。
6月27日、敵地サンフランシスコでのジャイアンツ戦のマウンドに上がったダイヤモンドバックスの平野佳寿投手は、3人目の打者を遊ゴロに仕留めると、小さくガッツポーズした。
それは平野にとって、メジャーリーグ通算110試合目の登板であり、オリックス時代と合わせるとプロ野球通算659試合目の登板だった。
まさかなと思ったのは、ガッツポーズではない。
2対1という僅差のゲームの6回裏、無死一、二塁というピンチに登板して無失点に抑えたのだから、ガッツポーズが出て当然だ。
その日の先発投手、25歳の新人アレックス・ヤングが5回を3安打1失点に抑え、メジャーリーグ初登板初勝利を目前にしていた。そんな左腕の思いを意識していたのだろうか?
「最初で最後かもしれないんで」
「最悪、同点でも(仕方ない)という考えもあるけど……」
涼しげな表情の平野がそう話し始めたのは、5-1で逃げ切った試合後のことだった。
「新人のピッチャーがいい投球していたし、初勝利を逃してその後、勝てない人もいるので、そういうことはいつも思いながら投げている。もしかしたら、これが最初で最後のチャンスになるかもしれないんで」
意外だった。
平野がマウンド上で感情を表すことは珍しくないが、それは自分の投げる球やピッチングそのものに対してである。それが「新人のピッチャー」という要素に向けられることなど、想像できなかったからだ。