酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
八村塁と大谷翔平の年俸から見る、
NBAとMLB、NPBドラフトの違い。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byGetty Images
posted2019/07/16 08:00
アメリカでの活躍に注目が集まる八村塁(左)と大谷翔平。彼らを通してドラフトを見てみるのも面白い。
現在「ドラフト外」は認めてない。
立教大学の長嶋茂雄、法政二高の柴田勲、撫養高(のち法政大)の長池徳二、彼らは鶴岡の勧誘でほとんど南海に入団が決まりかけていた。しかし長嶋と柴田は巨人にさらわれ、長池は法政大学にいる間にドラフト制度ができて阪急に行った。
こうした札束が舞い飛ぶ争奪戦は、何度もメディアに取り上げられ、ときには国税庁が動く騒ぎにもなった。その挙げ句にドラフト制度ができた。
しかし以後も意中の選手を獲得したいという一部球団の意向で、日本のドラフトは揺れ続けた。逆指名や希望枠などドラフトの主旨に反する制度が導入された時期もあるし、裏金問題で揺れた時期もある。
そんな紆余曲折を経た後、現在はドラフト1位だけは指名入札からのくじ引き、2位以下はウェーバー制(前年の下位チームからの指名)となり、育成ドラフトも行われている。
なおNPBは1993年以降、日本のアマチュア選手の「ドラフト外」での入団を一切認めていない。注目されることは少ないが、これはNPB特有の仕組み。日本の野球選手がプロ野球に入るためには、“絶対にドラフト指名されなければならない”のだ。
MLBで指名される合計は1200人。
一方で、MLBのドラフト制度どうなっているかというと、NPBとほぼ同時期に始まった。こちらは前年の下位チームから指名する完全ウェーバー制。一時期は、年2回行われていたが、今は6月の1回だけである。
そしてNPBのドラフト制度は何度もルールが変わったが、MLBのドラフトはほとんど制度が変わっていない。
最大の特徴は指名する選手数の多さだ。各球団が40人もの選手を指名する。そのためドラフトで指名される選手は合計1200人にものぼる。少し前までは1球団50人、全体1500人だったのだから、これでも減ったのだ。
選手を大量に獲得するのは、MLBが傘下に巨大なマイナー組織を抱えているから。MLBのアメリカン・リーグ、ナショナル・リーグ計30球団の傘下には、16リーグ250チーム、7000人弱の選手がプレーするマイナー・リーグがあり、ルーキーリーグもある。MLBでは獲得した40人をその中に放り込んで競争させ、メジャーリーガーを作っているのだ。