酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
八村塁と大谷翔平の年俸から見る、
NBAとMLB、NPBドラフトの違い。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byGetty Images
posted2019/07/16 08:00
アメリカでの活躍に注目が集まる八村塁(左)と大谷翔平。彼らを通してドラフトを見てみるのも面白い。
NPBはNBAに近い構造なのかも。
かといって、NBAのほうが選手層が薄いかといえば、そうではない。アメリカにはNCAAに属する大学バスケットボールが、プロ顔負けの人気を集めている。その下には高校のリーグもある。
いわば、MLBがマイナー・リーグでやっている「育成」の部分を、NBAはアマチュアに任せているのだ。
スター選手だけを抱えたNBAのほうが、スター選手と比べて10倍もの無名選手を抱えたMLBよりも遥かに経営効率は良い。アメリカのファームは独立採算が基本ではあるが、傘下の全選手の年俸の大半はMLB球団が負担しているのだ。
こうしてみていくと、NPBは、MLBよりもNBAに似た組織だと言える。育成の裾野は大学や高校、社会人に委ね、そこで実績を残した選手をドラフトで指名しているからだ。
少し乱暴かもしれないが、大相撲にたとえてみる。MLBが幕内、十両から、幕下、三段目、序二段、序の口、前相撲の褌担ぎまで、全部1つの団体で面倒を見ているのに対し、NBAはGリーグを加えても幕内、十両だけの団体であり、幕下以下はアマチュアに委ねているという感じか。
MLBのドラフト指名選手は、「新序出世」であり、これから番付を這い上がっていく(幕下付け出し的な選手はいるが)。しかしNBAのドラフト指名選手は指名された時点で新十両、あるいは新入幕力士に相当する。
八村と大谷の似ている点とは。
さて、八村塁である。
ゴンザガ大学時代の実績が高く評価され、1巡目全体9位で指名された彼は、野球で言うところの「新人」ではない。まだNBAの公式戦にこそ出ていないが、「活躍して当然」の「スター選手」だ。巨額の年俸はその評価でもある。ただし、その期待に応えられなければ、評価は一気に下がるのだろう。サマーリーグでの活躍が伝えられているが、競争はすでに始まっている。
大谷翔平は、MLBのドラフトは経ていないが、前にいたリーグ(NPB)での成績が評価されて、いきなり「一軍待遇」で入団したという点で、八村に少し似ている部分がある。