炎の一筆入魂BACK NUMBER
“二軍ブルペン”を視察する首脳陣。
歯車が狂い始めた広島に策はあるか。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2019/07/08 12:10
さえない表情で戦況を見つめる広島・緒方監督(左)。交流戦以降、調子を落とすチームにどんな策を講じるか。
打線は解体、方程式も再構築。
だが、広島は交流戦をきっかけに前半戦終盤に急失速した。5月までの打線は解体され、勝利の方程式も再構築を余儀なくされた。交流戦は5勝12敗1分けで、5年ぶりの最下位。リーグ戦が再開した後も9試合白星無し(7月7日時点)。一時は最多14あった貯金は、7月5日になくなり、同6日には約2カ月ぶりの借金生活に突入した。
苦しい時期に、経験の浅い高橋大樹やメヒアが輝きを見せた。チーム内のカンフル剤と期待され、スタメンに名を連ねるようになった。
一方、新しい力に期待したことで長野久義や当時チーム最多タイの本塁打数を記録したバティスタを二軍降格させなければいけなくなった。
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競争社会で結果を残した者が生き残るプロの舞台。ただ、長野は代打で5打席連続無安打も、先発出場した最近5試合では20打数5安打で打率2割5分だった。外国人枠の影響で降格となったバティスタも、打撃内容が悪い打席が続いたとはいえ打率2割8分。二軍でも降格3試合目には本塁打を放っている。
ともに後半戦初戦には再登録できる。だから、経験の浅い勢いある選手で何とか球宴期間まで乗りきり、経験者を戻せる後半戦に勝負。というのが一軍首脳陣のシナリオだったかもしれない。
菊池をスタメンから外した阪神戦。
だが、あの手この手で日替わりのように打線を組むも、思うように機能しない。6月22日オリックス戦から7月5日阪神戦まで10試合続けて3得点以下。7月6日阪神戦では右下手投げの青柳晃洋に対し、東出輝裕打撃コーチが「今年の打線の柱は2番菊池と4番鈴木だけ」と言っていた菊池涼介をスタメンから外すなど、相手投手の兼ね合いから聖域なき起用も見られた。
白星を積み重ねた5月も、首脳陣にはチームの完成形が見えていなかったのかもしれない。結果的に大きな代償を払った球宴直前の打順での試行錯誤や若手起用は、シーズン終盤の戦いを見据えた戦力見極めの意味合いもあったと思われる。勝てていれば称賛される策も、失敗に終われば動揺を生むこともある。
さらに開幕したばかりの4月には聞こえなかった選手への厳しい言葉も散見されるようになった。