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浦和の“組長”大槻監督の気配り力。
仙台時代の教え子にも響いた「愛」。 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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posted2019/07/03 07:00

浦和の“組長”大槻監督の気配り力。仙台時代の教え子にも響いた「愛」。<Number Web> photograph by Getty Images

5月末にオリヴェイラ氏の後を継ぎ、浦和レッズを率いる大槻毅監督。就任時の言葉からは覚悟が窺い知れた。

平川コーチ「戦術のイロハを教わった」

 熱いモチベーターであるが、それだけではない。スカウティングも得意分野。中村GMは「優れた分析力を持っている」と評価する。パソコンでのデータ解析、プレゼンテーションはお手のもの。ミーティングは簡潔明瞭に済ませる。武藤雄樹は「説明がすごく分かりやすいんです」と話す。自軍の戦力に照らし合わせ、相手のウイークポイントを的確に突く戦略を立てる。試合では、それが見事にはまるのだという。

 百発百中ではないかもしれないが、結果は確実についてきている。

 水戸ホーリーホック、大宮アルディージャ、ベガルタ仙台でもコーチ経験を積み、多様なスタイルを吸収してきた。さらにさかのぼれば、筑波大のコーチ時代から理論的に説明することに長けていた。平川忠亮コーチ(筑波大出身)は、「大学時代に、当時コーチだった大槻さんから戦術のイロハを教わった」と現役時代に話していた。プロ選手経験はないものの、言葉で人を納得させる力を持っている。

練習試合で汰木をPKキッカーに。

 肝心のマネジメント力はどうか――。中村GMは感心していた。「クラブの隅々まで、細かいところまでよく気を配っている。観察力がある」。ボーダーライン上の選手たちへの配慮も欠かさない。普段の練習でも近くまで歩み寄り、直接声を掛ける。

 大槻監督就任後、ベンチ外が増えた汰木康也は「気にかけてもらっているのが分かる」とモチベーションを落とさずに取り組んでいる。大学生との練習試合では「コウヤ!」と何度も大きな声で呼び、試合中のPKを蹴るように指示を出すこともある。

「ボールを持ったら何でもできるんだから自由にやれ」と背中を押しつつ、課題のオフ・ザ・ボールの動きは細かく指導。スタッフ陣にも目を配り、練習前後には必ずコーチミーティングを行う。一人ひとりに意見を述べさせ、1日1日のトレーニングを見直し、質の向上に余念がない。

【次ページ】 「言葉に愛があるんです」(群馬・渡辺)

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